なぜバウアーは広島戦で7失点“炎上”したのか…「球種がバレていた?」「高めゾーンを使うメジャー流は通用しない?」極秘で予定していたヤクルト戦の中4日登板は白紙へ
「2ストライクから打たれたヒットの被打率が7割近い。通常は1割8分程度だが、それが続くと結果を出すのは難しい」
その言葉通り、2ストライクに追い込んでから打たれた長短打が実に8本中6本。データ主義のバウアーにしてみれば、これも信じられない数字だったのだろう。
だが、広島打線は、バウアーをミーティング通りに攻略した。決して不運ではない。
「各自がいい対応をしていた。各選手がプランニング通りに対応できた」とは、広島の新井監督の試合後コメントだ。
ネット裏にいたスコアラーの1人が匿名で広島の戦略を明かす。
「バウアーはメジャー流であえて高めにストレートを使ってくる。特に打者の一巡目には、ストレートを軸にする傾向が強い。その高めのストレートを狙い、そこに目付けをしておいての変化球対応。いわゆる我々スコアラーの間でA型と呼ばれる対応方法で広島は攻略した。左打者は、基本、高めのストレートを引っ張りにかかり、変化球の場合は、それを逆方向へ打つ。秋山がナックルカーブを逆方向に運んだが、あれもストレートを待っての変化球対応でさばいたもの。走者を出すのでバウアーは、クイックで投げざるを得なくなり、右膝を折って、しっかりとタメを作って投げることができず、ボールの質も落ちたし、フォームでタイミングを外すこともできなくなっていた。広島は、2度目の対戦でボールの球筋もわかっていたので、高めの浮いたボールを打ち損じることもなかった」
A型対応とは、南海、ヤクルト、阪神、楽天で監督を務めた故・野村克也氏が、投手の攻略方法を「コースで待つ」、「打球方向を決める」など、タイプ別にA、B、C、Dの4つに分類して、野球界に広めたもので、ストレートを狙い、もし変化球が来れば、それに対応するというオーソドックスな攻略法がA型と呼ばれている。
9日の新潟で3本塁打を含む7点を奪ってバウアーを攻略した巨人は、足を使って揺さぶりをかけて、甘く浮いた変化球を狙い打ちしたが、これも、目付を高くしてのシンプルなA型対応の成果だったという。
バウアーは高めゾーンにストレートを使うが、それはフライボール革命が浸透しているメジャー打者のアッパースイングだからこそ通用するスタイル。広島打線のようにコンパクトにレベルに振ってくる日本の打者には、そこが逆につけいる隙となる。
この日、ストレートは最速157キロをマーク。バウアー自身は、「感触は一番の状態。コントロールもよかった」との手ごたえを持っていたが、打者の体感とのギャップも大きかった。
「3試合すべてでストレートがシュート回転している。動かしているわけでもない。だから打者は、球速表示よりストレートが来ていないと感じて、その高めが絶好球になる」と、前出のスコアラー。
菊池をストレートで三振に斬って取ったが、差し込まれるファウルが、この日は、ほとんど見られなかった。また平均球速は、3日のデビュー戦の広島戦より上がっていたが、トラックマンデータによる回転数は、逆に落ちており、ボールの質としては「普通に戻っていた」という。
三浦監督は、巨人戦の反省から、機動力を封じるために、捕手を伊藤光から肩の強い山本に代えたが、配球に変化を持たせることも狙いとしてはあったのだろう。だが、イラついたバウアーはサインにクビを振ってストレートを選択するので、配球に変化をつけることができなかった。それでもバウアーは「球種選択は悪くなかった」と振り返った。
「2ストライクからボールゾーンに、いろんな球種を投げてもヒットになっている。ボールの質、制球、球種選択が問題ではない」
だが、三浦監督の分析は違っていた。