なぜラグビー「リーグワン」で東京ベイが初優勝を飾ることができたのか…南ア名将の“飴と鞭”、そして内外の選手補強の努力
その一人がバーナード・フォーリー。W杯イングランド大会、W杯日本大会に出場したオーストラリア代表経験者のスタンドオフだ。
試合では巧みなゲームコントロールを披露し、クラブハウスでは朗らかに同僚に話しかけ、練習場では個人トレーニングをする若手に助言を送った。
「リーグワン」元年も1部12チーム中3位と好位につけていた。
フォーリーは、スピアーズの強さの理由をこう語る。
「人との繋がりが強く感じる。選手、スタッフ、マネジメントが皆でエンジョイしている」
ヘッドコーチのルディケは視野を広げて言う。
「クボタの会社側も時間、費用をかけてくれた。選手の家族も犠牲を払うなか、(約)7年間、やってきて、(目標を)達成できた」
戦力補強と言えば、海外選手だけでなく日本の学生選手のリクルートでも成果を示した。
石川充ゼネラルマネージャー、前川泰慶チームディレクターが各地にアンテナを広げ、昨季まで2シーズン連続で国内リーグの新人賞選手を輩出した。昨年度、新人賞を受賞したのは、決勝のハイライトシーンで、こぼれ球を拾った法大で主将だった根塚である。フィニッシャーとなった木田も、今季リーグ2位となる16トライをマーク。元立命大主将にして、今年の新人賞候補の最右翼候補だ。
積み重ねはグラウンドの外にもある。
クラブがファンを「オレンジアーミー」と名付け、チームカラーの応援シャツを無料配布したのは2021年のことだ。
リーグワン元年からは、年に7名ずつのファンを「オレンジリポーター」に選出。選手やスタッフへのインタビュー記事を書いてもらい、現場とファンの相互理解を促した。
国立競技場で凱歌を奏でながら、根塚はしみじみと思った。
「ファンの方は1年間、ずっと応援してくれていて、終わった後も『コーギー!(根塚のニックネーム)』と呼んでくれて、(グッズの)タオルを掲げてくれた。この景色を一緒に見られるのは幸せ。来年もここに戻ってこられるようにしたいです」
選手、スタッフ、ファンを含め家族的な雰囲気を醸すスピアーズ。
その象徴たる立川は、「きょうの試合を作り上げたのは両チーム。そこに敬意を表しながら、喜びたいと思います」と敗者へのリスペクトを忘れていなかった。
(文責・向風見也/ラグビーライター)