「藤浪晋太郎は今が正念場。何かを変えないと成功は厳しい」…球界大御所が苦境脱出狙うアスレチックス元阪神投手に“辛口檄”
13日(日本時間14日)には、かつて横浜DeNAでプレーした中継ぎのスペンサー・パットンをロースターの40人枠から外して事実上の戦力外にした。だが、これはパットンがマイナー契約だったからできたことでメジャー契約を結んでいる藤浪とは置かれた立場が違う。
アスレチックスは、昨年オフに阪神からポスティング申請した藤浪と年俸325万ドル(約4億3500万円)プラス最大155万ドル(約2億円)の出来高がついた1年契約を結んだ。40人のロースター枠が保証されるメジャー契約。本人の同意がなければマイナー落ちがないという契約を結んでいると見られているが、60勝102敗だった昨季から今季をチームの土台を作る過渡期と捉え、できるだけ経費を切りつめている“貧乏球団”アスレチックスの中では、5番目となる高額年俸。優勝争いができるならまだしも、苦しい戦いを覚悟している球団としては簡単に藤浪を“戦力外”にするわけにはいかず、ギリギリまでメジャーで復調のチャンスを与え続けたいという事情がある。
先月24日(日本時間25日)に中継ぎへの配置転換を決断した際にも、コッツェー監督は、「まずは直球の制球を取り戻すことだ。先発ローテーに復帰できないわけではない」と先発復帰の可能性を示唆した。これは決して社交辞令ではなく、球団フロントサイドが「使える」と判断して、なけなしのお金をはたいて藤浪に投資した分は、なんとしても回収しなければならないというチーム事情が背景にあるのである。
それらの事情を知った上で広岡氏は、こんな檄を飛ばす。
「契約上クビになることはないだろうが、今が正念場。何かを変えないと成功はない。藤浪は真面目な性格だと聞いているし、彼なりにやるべきことはやって、もがき苦しんでいるのだろう。あれだけの潜在能力を開花させられないのは、もったいない。今、何かを劇的に変えなければ、今年だけでなく、来年のメジャーの契約など勝ち取れないし、日本に帰ってきても同じことの繰り返しになる。制球難の理由は、ぶれの大きいフォームだ。大谷やダルビッシュのようにテイクバックをコンパクトにするフォームに思い切って取り組んでみてはどうか」
藤浪は、トラックマンのデータや動作解析を積極的に利用し、シアトルの「ドライブライン」の門を叩くなどして、科学的にフォームの微調整を行ってきた。しかし、テイクバックを小さくして、肩、肘への負担を減らして投球のぶれをなくすショートアームへの大胆なフォーム改造には、まだ手をつけていない。中継ぎで毎試合ブルペンで待機するシーズン途中での大がかりなフォーム改造は難しいかもしれないが、マイナーで時間をかけて取り組むという手もあるだろう。メジャーのコーチは、そういう選手生命にかかわるような助言は行わないので、藤浪自身が決断しなければならない。
まだコッツェー監督は、藤浪を見限っていないが、チーム方針が切り替えらる前に、結果で首脳陣の信頼を勝ち取ることが重要になる。広岡氏が指摘するように藤浪は5月にして正念場を迎えている。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)