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イニエスタは神戸の退団会見であふれる涙をぬぐった
イニエスタは神戸の退団会見であふれる涙をぬぐった

「監督の優先順位が違う」なぜイニエスタは涙の神戸退団を決断したのか…背景に「バルサ化」の“真逆”に向かったチーム方針

 イニエスタが加入した直後に掲げられた「バルセロナ化」とは対極に位置する、堅守速攻スタイルがはまった神戸は開幕から好調をキープ。昨シーズンの11勝に迫る9勝をすでにマークし、2位の横浜F・マリノスに勝ち点3差をつけて首位に立っている。
 その間、イニエスタは3試合すべてが後半途中からの出場に、プレー時間も合計38分にとどまっていた。今シーズンの神戸で居場所を見つけられない現実が「それぞれが歩んでいく道」であり、さらに「監督の優先順位」という言葉に反映されていた。
 キャプテンとして悲願のリーグ優勝を目指す今後の戦いを見守りたい。一方で自分のなかで燃えさかる炎も抑えられない。最終的には後者が上回って退団を選んだ。それでも神戸へ注ぐ愛情は変わらない。だからこそ、イニエスタをして「プロ人生で最も難しかった」と言わしめた決断に至るまでの葛藤が、会見でこらえ切れずに流した涙に凝縮されていた。
 会見のなかで、イニエスタはこんな言葉を残している。
「プレーを続けたいという私の気持ちを理解していただき、(シーズン途中での退団という)決断をリスペクトしてくれたことに心から感謝しています」
 神戸とイニエスタの円満な別れは、両者の未来へと繋がっていく。
 短期的にはイニエスタの見納めとなる試合だ。6月6日に東京・国立競技場での開催が決まり、すでにチケットも発売されている古巣バルセロナとの国際親善試合が、当初は神戸での最終戦になると国内外で報じられていた。しかし、会見の冒頭でホームのノエビアスタジアム神戸に札幌を迎える、7月1日のJ1リーグ第19節が最終戦になると発表された。
 バルセロナ戦を「日本中のみなさんと楽しみたい」と心待ちにしながら、イニエスタは札幌戦を「自分にとっても特別な試合になる」と位置づけている。
「ヴィッセル神戸のユニフォームを着て、過去5年間ホームとしてきたノエスタで最後のお別れを告げる日になる。ノエスタでお会いできるのを心待ちにしている」
 平日のナイトゲームで、しかも神戸ではなく東京で開催されるバルセロナ戦には、ホームタウンのファン・サポーターを軽視していると批判が寄せられていた。しかし、この一戦はバルセロナ側からJリーグを介して神戸に打診され、Jリーグが主催する形で、6月7日に予定されていた天皇杯2回戦を同14日に変更する特別措置の末に開催が決まっていた。
 自分や家族を受け入れてくれた神戸のファン・サポーターを愛するイニエスタとしては、やはり地元で最後の別れを告げたかったのだろう。バルセロナ戦後では初めてホームで開催されるリーグ戦が札幌戦となるなかで、おのずと最後の舞台に設定された。

 

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