「スライダー軌道の真っ直ぐを上手く使っている」なぜ阪神の村上はパ相手にも通用したのか…“WBC戦士”源田ら8回無四球1失点に抑えられた西武打線が感じた理由とは?
初回の失点を挽回できないまま敗れた一戦を、松井監督はこう振り返った。
「村上君は真っすぐにしても変化球にしてもコントロールが非常によかったし、いい高さへ投げてきたと思いました。1、2番の近本君と中野君にしても、あれだけの出塁率と足があるのを考えると、何とか先手、と思っていたんですけど」
直球の最速は148km。4回に陽川へ投じた1球だけで、しかも高めのボール球だった。決して速いとはいえない。それでも打たれない理由はどこにあるのか。
WBCを制した侍ジャパンの一員で、大会中に負った右手小指の骨折から復帰したばかりの源田は「今日もフォアボールを出していないですよね。やはりコントロールが大事だと、あらためて思いました」と村上のコントロールを称賛。その上でこう続けた。
「真っスラというんですかね。真っすぐがスライダーの軌道になるので、それを上手く使っている感じというか。その上でツーシームとかを含めてコースを間違えることなく、ちゃんとコースにきっちり投げていた、という感じはありました」
3年目を迎えた今シーズンに村上が大きな飛躍を遂げている要因のひとつに、速さよりも質の面で磨き上げられた“動く直球”があげられる。
ボールのスピン量がさらに増え、スライダー気味の軌道を描きながら伸びてくる真っスラはいまや“浮き上がってくる魔球”として、直球のタイミングでスイングする打者のタイミングを狂わせる最大の武器になっている。
しかも村上は、意図的に真っスラを投げている可能性もある。
2020年のドラフト1位で桐蔭横浜大から入団し、先週末のオリックス3連戦の2戦目から4番を任されている渡部は、村上の真っスラにこう言及した。
「自分のときは、外のボールが真っスラしていました。内から真ん中に来る真っすぐに関しては、そのままスーッと来ていたんですけど」
2回の第1打席では直球2つで追い込まれた末に、133kmのフォークで空振り三振。前述した4回の一打同点の場面ではカットボールにフォークが2つと、変化球をすべて低目に集められた末に三球三振を喫した渡部は、村上についてさらにこう続けた。
「変化球でもストライクを取れるし、低めに集まっていたなかでゾーンの設定ができなくて難しくなった。ゾーンを上げていれば、という感じですけど、コントロールがよく、フォアボールが少ないピッチャーなので、どんどん振っていかないと追い込まれる。真っすぐ系を待っていたんですけど弾けなくて、最終的にフォークを振らされてしまいました」
ヒーローインタビューで、村上はこう語ってもいる。
「自分はコントロールでやっているので、そこを生かせたのはよかったです」
映像分析を含めて、西武ベンチも村上対策を講じてきた。しかし、実際に打席で目の当たりにする球筋はまったく違ったのだろう。源田や渡部を驚ろかさせた真っスラは、なおさら脅威に映ったはずだ。そこへコントールとテンポのよさが加わる。特にコントールに関しては無四球だけでなく、3ボールになったのも打者28人に対して3度だけだった。