「バウアーは変わった」なぜ横浜DeNAの元サイヤング投手は西武戦で1か月ぶりの2勝目をマークすることができたのか?
登板前に日米を跨いだ騒動となった「SWORD(ソード)セレブレーション」も初披露した。3回一死から、投手の高橋をハーフスイングの三球三振に斬って取ると、両手を高く掲げて、刀を鞘に納めるポーズ。来日、5試合目にして初めて見せて、満員のハマスタを盛り上げた。
「いつもやるわけじゃない。条件を満たしたときだけだ」と語っていたバウアーが、ピンチでもなく、三振をとって当然の投手から三振をとったタイミングで、なぜ繰り出したのか疑問だが、きっと彼なりの手応えがあったのだろう。
4回には一死から外崎にソロアーチを浴びて、同点に追いつかれ、さらに二死二塁からアウトカウントを間違えて鈴木の投手ゴロを三塁へ投げようとするハプニングもあったが、大崩れはしない。5回も三者凡退に打ち取り、その裏の勝ち越し劇を呼びこむ。
「打者バウアー」は自らを助けた。無死一、二塁から三塁側へうまくバントを転がした。そのゴロは、高橋のグラブをすり抜けて満塁となり、佐野、関根の連続タイムリーによる勝ち越し劇につなげた。
8回で109球。「完投できるにこしたことがない。私はひとりひとり目の前の打者に集中していくタイプ」と、本人は完投へのこだわりを否定したが、三浦監督も「打席が回ってこなければ、もう1回いかせるつもりだった」という。
8回二死一塁で、バウアーに打席が回ってきたため、代打が出されたが、90球前後あたりから、ボールが浮き始め、8回には、先頭の代打の平沼に、低めには投じたものの、コースの甘かったカットボールをライトスタンドへ運ばれた。左打者へのウイニングショットのひとつを打たれたのは、危険信号。まずバウアーに1か月ぶりの勝利投手権利を手にさせた8回での降板は賢明な判断だっただろう。
「カーブ、スライダーの精度と、前に飛んだボールがヒットにならなかったことがラッキーだったね。ただ3つも四球を与えたのは、今季初めてだし、全体的にもっといい精度で投げられたと思う」
三振は10個。「そんなに取ったとは知らなかった」も本音だろう。
三浦監督はバウアーの対応力と進化を称えた。
「投げれば投げるほどよくなっている。日本打者の特徴を理解してしっかりと攻めた」
伊藤光とのコミュニケーションが深まり、ここまで4試合のデータの蓄積を生かした頭脳的な投球術を「さすがだ」と褒めた。
ストライクゾーンで勝負し続けたハートも買った。
さらに「ブランクも日本のマウンドへの対応もある。だが日本に来てから(それらに)対応して変わってきた。回転数、スピード、コントロール、変化球のキレ…どんどん良くなっている。実戦での勘もそうだろう」と続けた。
DV疑惑で、約1年間の出場停止処分を受け、その間も、大学生相手にライブ投球などを続けてきたというが、やはり実戦の勘の鈍りもあったのだろう。加えてメジャーとは違う日本の打者の対応力や、傾向に苦しめられてきたが、メジャースタイルにこだわることなく、日本流に順応してきた。やはり元サイヤング投手の肩書はダテではない。