なぜ岡田阪神はヒット1本で“WBC戦士”佐々木朗希の攻略に成功して才木浩人がプロ初の9回完封で投げ勝ったのか?
阪神が4日、甲子園で行われた交流戦のロッテ戦に2-0で勝利した。ロッテ先発の佐々木朗希(21)に5回までノーヒットに抑えられていたが6回に足を絡めて大山悠輔(28)のたった1本のタイムリーで1点を奪って攻略に成功。才木浩人(24)がプロ初となる9回の完封勝利でWBC戦士に投げ勝った。
岡田監督が嫌う円陣が功を奏す
“令和の怪物”攻略は今季初めて組まれたベンチ前の円陣から始まった。6回の攻撃を前に今岡打撃コーチを中心に輪ができた。
岡田監督は「円陣組んだんでびっくりした」という。
岡田監督は円陣嫌いだ。この10年の充電期間も、試合中に円陣を組むチームを見る度に、「なんで円陣やんの?事前に用意した、そこまでのことと違うことをやるって相手に教えてやっているようなもんやんか」と、あきれていた。
5回まで毎回の9三振を奪われノーヒットノーランを続行されていた。ネット上では「ノーヒットノーラン」を予感する書き込みが増えていた。最速163キロのストレートに落差の激しいフォーク。手も足も出なかった。ただ4つの四死球で塁には出ていた。
この時、今岡打撃コーチが指示したのは、「ミーティングの確認」。低めのボールをしっかりと見極めて手を出さず、出塁したら足でかき回すというもの。岡田監督は、試合前に「今日は見送りの三振はしてええ」とまで通達していた。日本を代表するWBC戦士から複数安打は難しい。となれば四球と機動力を絡めてワンチャンスに賭けるしかない。加えて佐々木は球数で交代する投手。吉井監督は「90球」をメドにしていた。
「5回までは静かに。球数とか見て6回から」
ボールを見極めて球数を投げさせ、6回以降に勝負をかけることを岡田監督はプランニングしていたのである。
円陣効果だ。先頭の中野が四球を選ぶ。1-2と追い込まれてからフォークの3連投をすべて見逃した。そして続くノイジーのカウント1-1から中野がスタートを切った。ファウルとなったが、続く4球目にも再び盗塁を仕掛けた。
「フォークが多いんでフォークのカウントに走る」
カウント1-2からフォークを読んだ岡田監督のサインだった。今季の阪神はベンチが責任を負い「行けたらいつでも行け」の選手任せのグリーンライトではなくディスボールで走らせている。
フォークがワンバウンドとなり捕手の佐藤都がボールを弾き、中野は楽々セーフ。ノイジーは三振に倒れたが、大山の打席で球数は90球を超え、佐々木からカウント1-2から投じた3球目のフォークがまたワンバウンドとなり、佐藤都がブロッキングをできず中野は三塁へ進んだ。ジワジワと“詰め将棋”のように佐々木の心理にプレッシャーをかけた。
「大山もだいぶ楽やったんやないか。ワンバウンドを放れないですから。サードまで行くと」
次にフォークがワンバウンドになれば0-0の均衡が破れる。佐々木は腕が振れなくなっていた。
143キロのフォークが落ちない。
大山はコンパクトにそれをライト前に弾き返した。
「あの場面しかないと思って打席に入った。才木が頑張ってくれたので、勝ちをつけられてよかった」
たった1本のヒットで“令和の怪物”を攻略したのである。
大山は佐々木との対決が「楽しみだった」という。
「凄かったけれどこっちも負けるわけにはいかなかった」
虎の4番の“闘志”が、佐々木攻略を完遂させたのである。