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神戸退団の決まっているイニエスタは古巣バルセロナとの親善試合に先発出場、かつてのチームメイトであるシャビ監督と抱擁した(写真・ロイター/アフロ)
神戸退団の決まっているイニエスタは古巣バルセロナとの親善試合に先発出場、かつてのチームメイトであるシャビ監督と抱擁した(写真・ロイター/アフロ)

「ベテランになってもクオリティーの高さには目を見張る」黄金期を共に戦ったイニエスタと古巣バルサのシャビ監督は何を語り合ったのか?

 同45分にもスタジアムを沸かせた。バイタルエリアでボールを持ったイニエスタが、ペナルティーエリア内のMF齊藤未月(24)へパス。そのままスプリントを開始し、齊藤が落としたボールにダイレクトで右足を一閃するも相手GKの正面を突いてしまった。
 コースが見えれば貪欲にゴールを狙う姿勢だけではない。パスを出した後には自らも必ず走って選択肢を増やす。サッカーにおける基本で、なおかつ必要不可欠なプレーを日本のファンにあらためて見てほしい。イニエスタの思いが伝わってくるシーンだった。
 実際、イニエスタは会見でこんな言葉を紡いでいる。合計81分間のプレーで、最も印象に残っている自身のプレーを問われた直後だった。
「すべてが素晴らしかった。この試合は日本のファンへのお別れを告げる場であり、みなさんが自分に示してくれた愛情とリスペクトへ恩返しする場でもあったので」
 ホームのノエビアスタジアム神戸に札幌を迎える、7月1日のJ1リーグ戦をもって退団するとすでに公表している。その前に組まれた古巣バルセロナとの親善試合。バックスタンド側の高額な指定席に空席が目立ち、公式入場者数は4万7335人にとどまったが、バルセロナの意向もあって大規模な集客が見込める東京・国立競技場が舞台となった。
 札幌戦後のセレモニーを含めて、神戸のファン・サポーターにはあらためて思いを伝える。その前にバルセロナ戦を介して、心から愛する国となった日本のファンへも大切なものを伝えたい。イニエスタは「ピッチに立って楽しめた意味で、すべてがいい一日になった」と笑顔を浮かべながら、サッカーを楽しむ姿勢を届けられた自分へ及第点を与えている。
「自分が何を(日本に)残せたのかはわからないけれど、少なくともピッチの内外で、自分のサッカーに対する情熱やリスペクトの気持ちに従って、すべてを出し尽くすように心がけてきた。それがみなさんから感じているリスペクトや愛情への恩返しとして伝わっていればありがたいし、自分に対していい思い出を残してくれていればさらに嬉しい」
 試合後には予期せぬサプライズも待っていた。
 バルセロナの粋な計らいで、すべての選手のサインが入ったバルセロナのユニフォームが贈られたからだ。背番号は神戸でも象徴としている「8」。最後に場内を一周したときには、イニエスタは思い出に残るはずのユニフォームでそっと目頭をぬぐっている。
 涙腺が緩んだ理由を問われたイニエスタは、こんな言葉を残している。
「日本での5年間は、自分の人生の一部になっている。それを思い返したときに、特別な感情が込みあげてきてしまった。日本に来る決断を下して本当によかった」
 日本でも愛されるイニエスタの姿に、シャビ監督も熱いエールを送る。
「彼は誰もが知るレジェンド。ベテランになったが、ピッチ上でのクオリティーの高さは目を見張るものがあった。常に素晴らしい選手であり続け、バルセロナにもスペインサッカーにも素晴らしいものをもたらした選手だとあらためて感じたよ」

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