なぜ阪神の3つの“不敗神話”が一気に崩れたのか…北の大地で起きた誤算とミス
3-3で迎えた5回二死二塁で中野の打球は一、二塁間を抜けていった。その球足は遅く、しかもツーアウト。走者も、快足ではないが、遅くはない木浪だ。通常なら楽に勝ち越し点が入るケースだったが、万波が、物凄い肩を見せた。一見ノーバウンド返球に見えたショートバウンドを伏見もうまく捕球して手を伸ばして、頭から滑り込んできた木浪にタッチ。岡田監督はリクエストを要求しなかった。幻に終わった勝ち越し点。ここでリードしていれば、岡田監督は、8回加治屋、9回岩崎の新勝利方程式で逃げ切るプランでいた。
だが、同点となったことで、このプランが狂った。2日前に仙台での楽天戦で守護神の湯浅の制球が乱れ、二死から逆転サヨナラ弾を浴びた。岡田監督は、湯浅の配置転換を示唆したが、信頼できるブルペンが1枚足りない状況になっていた。後ろ3枚が確定できていない以上、延長の展開も考えると大竹を左打者の3番の加藤まで引っ張り、5月の月間MVPで勢いのある4番の万波から回跨ぎで加治屋に任せるプランしかなかったのである。
セ・リーグでタイトル経験のある某球界OBは「クローザー起用となる岩崎につなぐまでのブルペンの陣容を見てみると、湯浅、浜地、Kケラーが不安定で、加治屋と及川くらいしか信頼のおける投手がいない。中盤から修正してきた大竹との比較論でいえば引っ張ったことは間違いじゃないと思う。ただ問題は、佐藤の守備位置。江越の打球方向と、同点の8回の先頭打者という展開を考えると、長打を警戒して三塁線を締めておくべきだった」と指摘した。
大竹の続投は裏目に出た。
前日のゲームで一発を打つなど、古巣への強烈な恩返しをやってのけた江越に、また三塁線を破る二塁打を許したのだ。佐藤はファウルをアピール。ラインの内側でバウンドした打球はベースを超えてファウルラインの外に落ちた。この場合、ボールが三塁のベース上を通過したかどうかが判断基準になる。スローを見ても微妙な打球だったが、ルールで、塁審の目の前の打球についてのリクエストは対象外となっており、岡田監督はリプレー検証を要求することができなかった。
だが、前出の球界OBは、そもそも三塁線を締めていなかった佐藤のポジショニングを問題視した。1点勝負の終盤に引っ張りが多い江越に対してベース際を締めておくのはセオリー。佐藤は8日の楽天戦でも、7回二死三塁で、打者太田を迎えた際、かなり深い位置を守っていて、三塁前に意表を突くスクイズを決められた。2ストライクになるまでは、少し前を守りバントを警戒すべきだったが、まったくのノーマークで、その隙をつかれた。