なぜ阪神の3つの“不敗神話”が一気に崩れたのか…北の大地で起きた誤算とミス
今季阪神が3連敗をしなかった理由は、先発、中継ぎ陣の踏ん張りと粘り強く四球を絡める集中打だが、岡田監督が秋季キャンプから徹底してきた守備力の向上が、一役も二役も買っていた。その守備の部分に、ほんの小さな隙が出てきたことと“不敗神話“のストップは決して無縁ではない。対する日ハムが外野の守りでファインプレーを連発させていたのと対照的だ。
その8回、江越に二塁打を浴びた大竹は、続くマルティネスを四球で歩かせた。無死一、二塁。加藤は「あそこは明らかなバントのシチュエーション」と、送る準備をしていたが、新庄監督は「打て!」と強打を指示したという。
大竹は、カウント2-2になるまで、ストレート、ツーシームと、真っすぐ系のボールで押したが、加藤は一切反応を示さなかった。変化球待ちだったのだろう。
追い込まれても変化球待ちを貫くのか。それともストレートを軸にすべてのボールへの対応に狙い球を切り変えるのか。阪神バッテリーは、裏をかかずにツーシームで勝負し、外角に投じた、その球をセンターへ弾き返された。
9試合目にして大竹に初めて土がつき、その大竹が主にローテーに入っていた土曜日の無敗神話も崩れ、デーゲームの連勝も9でストップした。
虎の不敗神話のストップのもうひとつの理由は、ノイジー、佐藤の3、5番の不振だろう。
「あんまり振れていないことやろ」
報道によると、DH制を採用するパ主催ゲームで、打線がなかなかつながっていないことの影響を聞かれた岡田監督は、こう答えている。指揮官は、名指しこそしなかったが、ブレーキとなっているのは、この2人。
ノイジーには1本ヒットが出たが、たまたま変化球に対応しての軽打で、残りの3打席は3三振。出回っているデータ通りに弱点をつかれ打席での苛立ちも目につく。岡田監督は、7日の楽天戦でノイジーをスタメンから外したが、翌日には、左腕の辛島が先発だったことで復帰させ、9日の日ハム戦ではアンダースローの鈴木に対して先発から外し、この日、また3番に戻したが、休養効果は出ていない。
佐藤も2三振のノーヒット。9回は、日ハムの新守護神、田中正の初球の甘いストレートを見逃して、2球目のインサイドの難しいストレートに手を出して簡単に追い込まれた。最後は155キロのストレートに詰まっての二ゴロ。岡田監督のワンポイントアドバイスで見逃すことができていた不得意の内角球に、また手が出るようになってしまっている。これで3試合連続の無安打となった。3、5番がこれでは、打線はつながらない。打開策はノイジーを外しての打線の組み変えしかないだろう。
日ハムでは、本拠地での勝利後、指名された選手が、円陣の真ん中に立ち、マイクで一言メッセージを発してから「一丁締め」するのが恒例行事。2日連続で音頭を取ったのが江越だった。
「めちゃくちゃうれしいです。ファイターズファンの皆さん明日も勝ちましょう」
マイクを持った江越がそう挨拶して「よおー」の音頭を取り「ポン!」と“一丁締め”を決めた。
口は悪いが、心やさしい虎ファンは、前日の敗戦後もスタンドに残って阪神時代のユニホームを掲げてトレードで移籍した江越のヒーローインタビューを見守り、暖かい拍手と声援を送り続けていた。だが、さすがに2日続けての活躍に、その拍手の量は減っていた。「ちょっと待ってえやあ」の気持ちが沸いてきたのかもしれない。
ひとつ歯車が違えば、勝ち負けは反転していただろう。0勝143敗の究極のマイナス思考でペナントレースを俯瞰している岡田監督は、「見ててみい。そのうち5連敗、6連敗するから」と語っていた。だが、今は、先発が総崩れしているわけでもなく、打線にも、前川というニューカマーが登場して、近本、中野、大山、木浪と好調をキープしている打者が揃っている。5連敗、6連敗するチーム状況ではない。今日の日ハムの先発は、右腕の北川ではあるが、江越が、強烈な恩返しをするのなら、こちらもトレードで獲得した元日ハムの渡邉をDHでスタメン起用しても面白いのかもしれない。そして阪神の先発は、4日にWBCで世界一となったロッテ佐々木朗希と堂々と投げ合って勝利を手にした才木である。岡田監督としては、現役時代にルーキーから知る後輩の新庄監督に一矢も報いずに北海道の地を去るわけにはいかないだろう。
(文責・RONSPO編集部)