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右ウイングで出場した久保建英がエルサルバドル戦で1ゴール2アシストの活躍を見せた(写真:西村尚己/アフロスポーツ)
右ウイングで出場した久保建英がエルサルバドル戦で1ゴール2アシストの活躍を見せた(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

「自分の出たいポジションで最初から出たらやれる」なぜ久保建英が1ゴール2アシストと森保Jで“覚醒”し始めたのか?

 FW上田綺世(24、セルクル・ブルージュ)を狙った三笘のパスはずれた。しかし、すぐにモードを攻撃から守備に切り替えてボールを奪い返す。再び相手ゴール方向を向いたときに、三笘の視界の片隅にフリーの久保の姿が飛び込んできた。
「なので、建英が左足で打てるように、いい位置にパスを出そうと」
 ノールックから左足で、右斜め後方にいた久保へ優しいパスが供給される。しかし、シュートコースは限られ、相手選手がブロックに飛び込んできていた。それでも久保の左足からダイレクトで放たれた一撃は、対角線上にあるゴール右隅を正確に射抜いた。
 かなり難しいシュートだったのでは、と問われた久保は「あの形が一番簡単でした」と首を横に振った。さらに、スペインとイングランドで大活躍し、昨シーズンの後半戦をともに席巻した三笘との間で開通させたホットラインを独特の表現で喜んでいる。
「一番自信のあるところなので。まあ、(自分のなかの)オッズ通りなのかな、と。三笘選手も『アシストをつけてくれてよかった』と言ってくれましたし、(メディアの)みなさんにしても多分、活字にしやすいんじゃないでしょうか」
 2019年6月9日。宮城スタジアムのピッチに当時18歳の久保が途中投入され、A代表デビューを果たした国際親善試合の相手もエルサルバドルだった。
「あのときは交代で呼ばれてすごく嬉しかったのを覚えていますし、いまはそれがある種、当たり前になってきているなかで、それでも嬉しさや楽しさを忘れずに、代表の価値というものを僕たちで上げていければいいかなと思っています」
 言葉通りに、A代表でプレーする久保の姿は珍しくなくなった。しかし、結果が伴わない。2度目のエルサルバドル戦を前にして、23試合に出場して1ゴール。昨年のカタールW杯でもドイツ、スペイン両代表戦はともにハーフタイムで交代。後半の大逆転劇をベンチで見届け、クロアチア代表との決勝トーナメント1回戦は体調不良で欠場した。
 しかし、当時の久保は覚醒する状況がすでに整っていた。
 2019年6月から所属してきたレアル・マドリードと決別し、ソシエダへ完全移籍で加わったのが昨年7月。それまでの3シーズンはラ・リーガ1部クラブへの期限付き移籍を繰り返してきたが、いつしか「たとえ100%の力を出し尽くしたとしても、周囲からは『どうせレンタルの選手だろう』と見られてしまう」と忸怩たる思いを抱えるようになった。
 そこへ舞い込んだ完全移籍のオファー。久保は迷わずに、腰を据えてプレーできる環境を選んだ。そして、ソシエダのチームやサポーター、本拠地を置くサン・セバスティアンという町も、スペイン語を流暢に操り、人懐こく陽気な性格の久保を受け入れた。
 昨シーズンの久保はキャリアハイの9ゴールをマーク。ソシエダの快進撃をけん引しながら「ピッチ上でこれほど信頼されていると感じられるのは、プロになって初めてだと思う」と感慨深げに語ったこともある。ようやく巡り会えた理想のチームを4位に導き、目標にすえてきた来シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ出場権をも手繰り寄せた。

 

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