大麻成分が検出された井岡一翔のドーピング問題の全真相
プロボクシングの元4階級制覇の井岡一翔(34、志成)が、昨年大晦日のWBA世界スーパーフライ級王者、ジョシュア・フランコ(27、米国)との統一戦のドーピング検査で禁止薬物の大麻成分(THC―COOH)が検出された問題の全貌が22日、明らかになった。検出量が世界アンチドーピング機構(WADA)が定めている基準値を超えない微量だったため明日24日(大田区総合体育館)のフランコとの再戦は予定通りに行われるが、なぜJBCは世界戦直前に半年も前に起きた禁止薬物検出の発表をしたのか。そして今後の展開はどうなるのか。
「隠蔽を疑われたくなかった」
井岡の世界戦直前に激震を与えた禁止薬物の大麻成分の発覚問題。
WADAが定めた基準値を超えなかったため、JBCルールの第97条のドーピング違反が適用されず、WBO王座を返上して、フランコのWBA王座に挑戦する形でのダイレクトリマッチは、当初の予定通りに実施されることになった。関係者によると、すでにWBAにも経緯が報告されて承認を得て、フランコ陣営にも同様の連絡が行われ、世界戦の実施に同意を得たという。
だが、このタイミングでの、しかも21日深夜の発表に志成ジムは、井岡の大麻の摂取と使用を全面否定すると共に「非常に困惑し疑義を有さざるを得ない。このタイミングで発表することの必要性があったのか疑問が残る」と抗議。この日は、全国のプロジムを束ねる日本プロボクシング協会が、協会長の(セレス)小林昭司氏の名前で「事前に何ら知らされておらず(そもそも当該代謝物の基準に関する事項さえ知らされていない)、また昨年末の事象を半年後にしかも井岡選手の新たな試合の直前に、このような発表をした点につき大変困惑している」との声明を発表し、今後、JBCに緊急理事会などを通じて詳細な説明を求めていく方針を明かした。
なぜ世界戦前に半年も前のドーピング事案が発表されたのか。
安河内剛本部事務局長は、筆者の取材に対して「興行への影響を考えると、世界戦が終わってからの発表でいいのではないか、という意見はJBC内外からあった。一方でWADAの基準値以下であろうが、加盟していないのだから、今回の試合は中止にした方がいいのではないかという声もあった。慎重に協議、検討をしたが、B検体の再検査結果が世界戦前に明らかになった以上、できるだけ早く発表しなければ、隠蔽だと疑われ、フェアに世界戦が行われたとみなされない可能性がある。苦悩の決断だった」と説明した。
安全と公正を守り試合を統括するローカルコミッションの立場を貫いた。
ドーピング検査体制を一新しているJBCは、厳格に尿を採取し、尿検体をA検体とB検体に分けて、当事者のサインを求めた上で封印。病院で冷凍保存した上で、1月4日に米国の検査機関に回した。
大麻成分の陽性反応が出たという連絡が入ったのが同26日。ガス化する検査方式には、誤差があるため、大学教授や医師の指導のもと、再度確認作業を行い、間違いがなかったため、2月20日に倫理委員会を立ち上げて、5月26日に、志成ジムの同意を得て、B検体を裁判の化学的な証拠分析などで実績のある国内の権威ある検査機関で再検査することを決定した。
志成ジムの二宮雄介マネジャーらの責任者が同席のもとで再検査が実施されたのが、今月17日。当初、10日も候補に挙がっていたが、関係者の都合がつかず、17日にラボを貸し切りの状態で、検査が法医学の権威の教授など、複数の専門家によって実施され、禁止薬物の大麻成分のTHC-COOH(Carboxy-THC)が検出された。
志成サイドも大麻成分が出たことを確認したが、摂取、使用は、この場でも全面否定。事前に提出されていた使用したサプリや医薬品の中に海外で市販されている大麻成分の入ったマッサージ用のCBDオイルは含まれておらず、井岡サイドは、「前回の一件以来、細心の注意を払ってきたので、なぜ出たかまったくわからない」と困惑していたという。