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JBC実行委員会の後に会見を開くJBCの萩原理事長(左)と日本プロボクシング協会のセレス小林会長(右)
JBC実行委員会の後に会見を開くJBCの萩原理事長(左)と日本プロボクシング協会のセレス小林会長(右)

8.11世界戦までに“ノーモア井岡問題“の日本独自の厳格ドーピングルール制定へ

 WADAでは検出された成分が基準値以下の場合は陰性とみなされ発表もされない。あえて大麻が検出された事実をJBCが公表したのは、米国の一部地域やタイ、オランダなどで合法化されている海外とは違い、日本の社会では違法薬物として取り締まりの対象となっているためだ。
 JBCが、リリースにわざわざ「当法人は、ドーピング行為に反対し公正なボクシングを推進しています。また、当法人は、青少年の健全な育成を支援しており、日本における大麻などの違法な薬物の使用は一切認めていません。井岡選手のルール第 97 条違反以外の当法人の各種規程の違反を理由とする処分の可能性については当法人で検討中です」との一文を加えたのは、社会性を考慮してのものだった。
 世界的な基準で見れば微量の大麻はドーピング違反には問われない。海外ではプロボクシングはもとより、MLB、NBA、NFLなどの米4大スポーツでも閾値がかなり高く設定されており、そもそも大麻をドーピングの禁止項目から外している競技団体もある。パフォーマンスに大きな影響を与えないとされ、北米の一部地域では、大麻そのものが合法で、痛み止めなどの医療目的の薬品にも大麻成分が含まれているためだ。
 また日本アンチドーピング機構(JADA)は、その数値さえ明らかにしておらず、WADA同様、かなり高い基準値であると推測されている。
 それでもJBCが異例ともいえるほど厳格な独自ルールを制定しようとする背景には大麻を違法薬物とする日本社会のルールがある。現在は、大麻を所持していなければ刑事罰の対象にはならないが、使用でも処罰の対象になるように法を改正しようとする動きもある。
 ただ世界戦で海外のボクサーに、そのJBCルールを適用し処分の対象にできるのか、という問題がある。基本的には、WBA、WBCなどの各認定団体は、ローカルコミッションの統括、運営に任せている。だが、例外がいくつかあり、例えば、JBCルールでは、入れ墨やタトゥーは禁止されていて、ファンデーションを塗って隠すなどの措置が取られているが、海外ボクサーについては、そのルールは適用されずに黙認されている。そのダブルスタンダードに関して批判の声もある。またJBCルールでは、リミットの3パーセントを超える体重超過の場合、一発アウトで再計量さえ許さず、その試合は中止となるが、世界戦には適用されていない。安河内本部事務局長は、「プロビジネスの世界においてJBCの定めるルールが妥当かどうかという議論はあるが、大麻については外国人でもあっても所持していれば違法。タトゥーは文化として受け入れている国もあり一緒には扱えない」とした。
 なおドーピング検査をする禁止薬物の対象リストは40、50項目になる予定で、安河内本部事務局長は、「ルールの制定は、早くやらないとまずい。8.11の世界戦には間に合わせたい」とルール策定のスケジュールを明言した。8月11日に大阪で予定さているWBA世界ミニマム級暫定王者、重岡銀次郎(ワタナベ)の統一戦からは新ルールを適用したいという考え。
 また週明けの10日には、6月24日に行われた井岡―フランコの再戦のドーピング検査の結果が判明する予定で、その結果を踏まえて井岡の倫理違反などを問うなんらかの処分が、JBCの倫理委員会を経て下される予定だという。“ノーモア井岡問題”へようやく腰を上げたJBCの新ルール策定は評価されていいのではないだろうか。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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