「勝つために来た。ひよることも不安にのみこまれることもない」井上尚弥が挑むWBC&WBO王者フルトンが2000万円相当の高級腕時計をはめて来日!
フルトンは淡々とこう宣言した。
「自分の仕事を遂行するために来た。もちろん勝つためにだ。日本をエンジョイするだけでなく仕事をして帰りたい」
羽田での囲み取材に応じたフルトンの受け答えは、非常に紳士的だった。来日直後のコンディションに配慮して代表質問に限られていたが、「まだ質問をしていいか?」と、尋ねると笑って「あと2つくらいなら」と了承。最後にひとつだけ質問ができた。
――井上に勝つ自信は今何%あるのか?
「いつでも自信のレベルは高く持っている。どんな問題に直面しても、リラックスして気楽にとらえることを常に考えている、ひよることも不安にのみこまれることもない。自分がやるべきことをやるだけだ」
フルトンのボクシングスタイルを示すようなコメントだった。
遠い距離でも密着戦でも戦える完成度の高いボクサーのフルトンは、非常に危機管理能力が高い。派手なKOを狙うようなリスクを取った戦い方はせずに手痛い一撃を浴びることがあってもクリンチ、ダッキングなどの高度なディフェンステクニックを駆使してピンチを回避し、確実にポイントアウトのラウンドを作っていく。彼の言う「自分がやるべきことをやるだけ」とは、そういうボクシング。
井上も「身長、リーチともに自分よりある選手。印象としてはジャブを突いて距離をとって判定で勝つという選手。そういう選手ほど倒す難しさがある」と警戒している。それでもモンスターがパワーとスピードで圧倒すると予想するが、無敗の2人のボクサーが互いに勝ちだけに徹する「勝負論」のつまった究極の名勝負になることは間違いないだろう。
即席会見が終わるとフルトンはめざとく駆けつけた2人のファンにサインをねだられて気安く応じた。そのまま横浜市内のホテルへと車で移動したが、「今は、バックをホテルに置いたら、すぐ練習にいきたい気分だ。日々、体調、調子を見ながら(最終調整を)やっていきたい」と言ってニコっと笑った。
井上は、日本上陸を伝えるフルトンの公式ツイッターに、日の丸の絵文字と共にこうリプライしていた。
「ようこそ」
世界が注目する「史上最大のビッグマッチ」の幕が静かに上がり始めた。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)