なぜアルファタウリは角田裕毅とコンビを組んでいたデ・フリーズを電撃解雇してレッドブルのダニエル・リカルドの起用を決めたのか…その裏舞台と真の狙いとは?
また前述のように、7月11日にタイヤテストがあったことも、このタイミングでの発表となった可能性が高い。デ・フリースの成績がいかに悪くても、代わりがいなければ解雇できない。リカルドはかつてF1で8勝している実績があるとはいえ、ここ数年はマクラーレンで低迷し、今年はレースをしていない。腕が錆びついている可能性が考えられた。
タイヤテストというのは、通常のテストとは異なり、チーム側が自由にマシンのセッティングを変えることができない。そのため、レッドブルはイギリスGPで走らせたセッティングでリカルドを走らせた可能性が高い。
そのマシンでリカルドはイギリスGPの予選トップ10に入る好タイムを叩き出した。この報告を受けたホーナーが、レッドブルとアルファタウリのドライバーの人事権を持つヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)の承諾を得て、リカルドの復帰とデ・フリースの解雇を決定したものと考えられる。つまり、今回のドライバー交代にアルファタウリ側は積極的に関与していない。このリカルドのアルファタウリからの復帰は、2024年を見据えて先手を打った交代という見方もある。
というのも、レッドブルでチャンピオンシップを独走しているマックス・フェルスタッペンのチームメートであるセルジオ・ペレスがここ数戦低迷しているからだ。ペレスがこのまま低迷し、リカルドがアルファタウリで良い走りを披露すれば、2024年は、リカルドがペレスに代わって、レッドブルに復帰することも可能だ。
もしも、ペレスがこのまま低迷し、リカルドが角田裕毅を上回れなかったときは、角田の昇格も考えられなくはないが、チャンピオンマシンを有するレッドブルに移籍したいドライバーはいくらでもいる。その筆頭がイギリスGPで2位を獲得したランド・ノリス(23、マクラーレン)だ。
リカルドのアルファタウリ復帰発表は、2024年の椅子取りゲームの最初のワンプレイにすぎず、今後さらに加速していくと考えられる。
(文責・尾張正博/モータージャーナリスト)