7.25有明で注目の五輪メダリスト世界戦…「当たれば頭蓋骨を破壊する」“井上尚弥級”清水聡の“幻の左”は炸裂するのか?
今回は約80ラウンドのスパーリングを消化。特にアマ10冠でOPBF東洋太平洋フェザー級13位の藤田健児、アマ7冠で同級11位の中野幹士、階級が下で4戦4勝の矢代博斗という帝拳ジムが誇るサウスポーのアマエリート3人と“仮想ラミレス”としてスパーを重ね、その“幻の左”の復活に手ごたえを感じているという。
「ようやく、その左が戻ってきた。いちかばちか、玉砕覚悟で、その左をロベイシに相打ちで打っていけるかどうか」
松本トレーナーは“幻の左”の炸裂が勝敗を左右するという。
自らの現役時代に世界戦を3度経験。「期待とプレッシャーで安全策に走ってしまったことに悔いがある。だから清水には悔いを残して欲しくない。そういう話も伝えた」という。
一方、この日、視察に訪れたラミレス陣営のカルロス・ベラスケス・トレーナーは、それらの清水陣営のもくろみを一蹴した。
「コンディションはいいように見えるね。体格差?アマの長いキャリアの中で大きい選手とも小さい選手ともやってきた。何の問題もないし準備もしてきた。パンチ力?プロの小さいグローブをつけて戦えばどんな選手だってパンチ力はあるように見えるものだよ。もちろん勝つ自信はある」
12日に来日したラミレスは、余裕を示すようにツイッターに横浜中華街の寺院巡りをした写真や、居酒屋で寿司を食べている写真を投稿している。大橋会長は、「生ものを食べて当たらないか心配」と気にしていたが、ベラスケストレーナーは、「リラックスはしているが、自信満々で余裕があるから油断をしているわけではない」と弁解した。
ブックメーカー「ウィリアムヒル」のオッズでは、王者ラミレスの勝利が1.05倍で、清水の勝利が11倍。挑戦者が圧倒的不利と予想されている。
ラミレスは、スピードとテクニックに優れたサウスポーで、攻防のメリハリをつけるのがうまく、左のボディアッパーや、カウンター技術は一級品。一撃必殺のパンチ力はないが、頭の位置を変えたり、多種多様なフェイント技術を駆使してくる。ペースをつかまれてしまえば勝ち目はない。
だが、フックなどスイング系のパンチを強打する際にガードが甘くなる傾向にあり、そこに清水の“幻の左”がカウンターとなって炸裂すれば“番狂わせ”が起きる可能性が出てくる。
ラミレスは、リオ五輪では、前WBAスーパー&IBF世界スーパーバンタム級王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、2階級制覇王者で吉野修一郎(三迫)を寄せ付けなかったシャクール・スティーブンソン(米国)を僅差で破っているが、プロでは、これが初防衛戦。大橋会長も「初防衛戦は難しいとされているからね」とも言う。
プロ転向7年目にしてやっとつかんだビッグチャンスを前に、遅咲きの天才ボクサーが、爽やかに笑った。
「何%あるとかは言えないが自信はあります」
有明に奇跡は起きるのか。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)