今日“大荒れ必至”の井上尚弥vsフルトン計量&ルール会議…“難癖”防止のためにJBCは2種類の計量器を用意…レフェリーは亀田興毅ー内藤大助戦を担当した厳格“日本通”でジャッジも公平人選
プロボクシングの元バンタム級世界4団体統一王者の井上尚弥(30、大橋)が7月25日に有明アリーナでWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者、スティーブン・フルトン(29、米国)に挑戦するビッグマッチの前日計量及びルールミーティングが今日24日、横浜市内で行われる。ルールを厳守してきた井上のバンテージの巻き方に公式会見で難癖をつけてきたフルトン陣営が、また“神経戦”を仕掛けてくる可能性が高く、管轄のJBCは計量器を従来の分銅式とデジタル式の2つを用意して対応する方向。またフルトンが判定勝利を狙ってくるため重要になるジャッジの構成は、カナダ、イタリア、スペインの“中立国”の3人となり、レフェリーは、荒れる試合展開が予想された14年前の亀田興毅対内藤大助のWBC世界フライ級タイトルマッチをさばいた厳格で“日本通”のパナマ人が担当することも判明した。運命のゴングはいよいよ明日だ。
「そこについてはぐだぐだ言わさんよ」
にわかに緊張感が高まってきた。
大橋会長が言う。
「こちらもナイーブになっている。いつもの試合とは全然違う。このピリピリ感は久しぶりだな」
フルトン陣営は14日の公開練習を41秒のシャドーボクシングと数発のパンチングボール打ちで終わらせ、視察した井上真吾トレーナーを「失礼と感じた」とあきれさせた。
「もう試合は始まっているから」という大橋会長は、お返しとばかりに翌日の井上の公開練習を30秒のシャドーでストップをかけた。
そして22日の公式会見でのフルトンのチーフトレーナー、ワヒード・ラヒーム氏がバンテージの巻き方にクレームをつけた異例の“いちゃもん”である。
バンテージの規定はWBC、WBOなど各認定団体がローカルコミッションのルールに従っており、井上は、肌に直接粘着性のテープを貼ってOKというJBCルールに従い巻いてきたが、そこに「肌に直接テープを貼るのは違反だ」と難癖をつけてきたのである。井上のパンチ力を恐れての仕掛けだ。
「正々堂々と戦うのでご心配なく」
そう返した井上は、よほど、このクレームに腹が立ったのか、23日にツイッターに「日本には日本のローカルルールがある。 それはアメリカでも州によってローカルルールがあり巻き方が違う。 25日は日本開催だからもちろん日本のルールに従ってやるつもり。 そこについてはぐだぐだ言わさんよ」と投稿した。
今日24日には計量及びルールミーティングが行われるが大橋会長は、「ひと悶着あるな」と、フルトン側の出方を警戒している。
ルールミーティングでは、WBC、WBOに肌に直接テーピングを巻くことを禁じるように訴えるだろう。最終的には、2つの認定団体が決定するが、「ローカルコミッションルールに従う」という世界戦の大前提をWBCとWBOが覆すとは考えにくい。その場合、フルトン陣営はどう対応するのか。ワヒームトレーナーは「リングに上がらせない」とも語っていたが、過去最高額となるファイトマネーが積まれている試合をキャンセルするような愚行はできないだろう。
一方の井上陣営にもルールミーティングで訴える材料がある。
公開練習で真吾トレーナーが「クリンチでホールドの反則をちゃんと見てもらうようにルールミーティングでお願いしたい」と明かしていたクリンチワークの厳重チェックだ。
フルトンは体格差と巧みなクリンチを使う密着戦で相手の長所を封じこめるのが武器のひとつ。ホールドという相手の腕などをつかむ反則行為に抵触する“ギリギリ”のクリンチを繰り出してくる。ホールドは減点対象。レフェリーが、クリンチ時の反則行為を見逃すのと、厳しくチェックして注意を与える、減点を取る、あるいは、すぐにブレイクを指示するのでは、大きく試合の展開が変わってくる。レフェリングは重要なのだ。
そのレフェリーは、パナマのヘクター・アフー氏が務めることになった。
過去に日本で世界戦を4試合さばいた。2017年11月の寺地拳四朗(BMB)ーペドロ・ゲバラ(メキシコ)のWBC世界ライトフライ級戦、2013年11月の山中慎介ーアルベルト・ゲバラ(メキシコ)のWBC世界バンタム級戦、2012年4月の山中ービック・ダルチニアン(豪州)の同世界戦、因縁試合として注目を集めた2009年11月の亀田興毅ー内藤大助のWBC世界フライ級戦など、日本のリングでも“お馴染み”の20年目となるベテランレフェリー。亀田ー内藤戦は、反則スレスレの荒れた試合になることが予想されたが、厳格なレフェリングで問題なくさばいた。
日本の試合は、海外でも「公平」で通っているが、アフー氏であれば、フルトンびいきのレフェリングをされる危険性はなく、反則行為も厳格に見るだろう。