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クロフォード(左)がスペンスを9回TKOで下して2階級4団体統一の偉業を成し遂げた(写真・AP/アフロ)
クロフォード(左)がスペンスを9回TKOで下して2階級4団体統一の偉業を成し遂げた(写真・AP/アフロ)

世界注目“最強決定戦”…クロフォードが戦慄の9回TKO勝利でスペンスを下して井上尚弥より先に2階級4団体統一王者の偉業を達成

 プロボクシングのウェルター級の4団体統一戦が29日(日本時間30日)、米国ラスベガスのT―モバイルアリーナで行われ、WBO世界同級王者のテンス・クロフォード(35、米国)がWBC&WBA&IBF世界同級王者のエロール・スペンスJr.(33、米国)を9回TKOで下した。クロフォードは2回、7回と計3度のダウンを奪っての圧勝。スーパーライト級の4団体統一に続く史上初の2階級4団体統一を成し遂げた。WBC&WBO世界スーパーバンタム級新王者になったばかりの井上尚弥(30、大橋)が年内に同記録を狙っていたが、一足先にクロフォードが偉業を達成した。クロフォードは40戦無敗(31KO)。

 「実力を世界に示すことができた」

 

 誰がこんな結末を予想しただろうか。
 9ラウンド。ここまで3度のダウンを喫し、両目が晴れ、鼻血が噴き出していたスペンスは、クロフォードに右ジャブから右フックを浴びてよろめき、さらに右フックを強打されてロープに下がったところでレフェリーが試合を止めた。
 クロフォードはコーナーに駆け上がり喜びを表現した。
 そしてコーナーに座り込んでいたスペンスに近づき「いい試合だったな」と声をかけた。まだスペンスが立った状態で試合が止められたが、クロフォードは、「選手を守るレフェリーの判断は良かった。止めてくれて良かった。ハードなパンチが連発したからね」と評価した。
「神に感謝したい。世界チャンプになることを夢見ていたが、誰も昔は信じてくれなかったが、ここまできた。スペンスにも感謝したい。この試合を実現してくれてありがとう」
 史上初の2階級4団体統一を成し遂げたボクサーは、こう続けた。
「何度も試練に向き合って乗り越えてきた。下を向かずに前を向いてここまで進んできた。この機会を得て、実力を世界に示すことができた」
 クロフォードは傷ひとつない綺麗な顔をしていた。

 世界が注目していた無敗同士の最強決定戦は、意外な展開からスタートした。
 2ラウンド。スペンスの右のボディストレートに反応したクロフォードが左から右ストレートを撃ち込む“逆ワンツー”を的中させ3団体統一王者が尻もちをついたのだ。
 すぐさま立ち上がったスペンスだが、ペースとポイントを取り戻そうと焦ったのだろう。3ラウンドから強引に前に出る。コーナーに詰めてボディにパンチを振り回すが、右の伸びてくるジャブを軸にカウンターを狙うクロフォードの牙城を崩せない。
 4ラウンドにはスペンスが鼻血を吹き出し、5ラウンド開始前にドクターチェックが入ったほど。
 そして7ラウンドにクロフォードの一撃に戦慄が走った。
 スペンスが繰り出した左フックにロープを背にしていたクロフォードの右のショートアッパーのカウンターが炸裂。なんと、スペンスが、それを打った後に倒れるという漫画みたいなシーンを演出してダウンを奪ったのである。
「彼は、あのパンチが見えていなかったのだろう。平行感覚を失ったと思う」
 スペンスは立ち上がったが、クロフォードは終了際に右のフックで、このラウンド2度目のダウンを奪う。8ラウンドも、スペンスは、あきらめずに前に出続けたが、すでにパンチは死んでしまっていた。
 クロフォードのフィニッシュは、もう時間の問題だった。
 試合後、クロフォードは、身長では劣るが、リーチでは上回ったジャブの差し合いが焦点だったと明かした。
「彼のジャブを警戒していた。彼のジャブ対策が焦点だったが、うまくいった。
練習を積み重ねた結果。フリック式のジャブも取り入れた。スタミナもあって強いことを示すことができた」
 サウスポースタイルからのクロフォードの右ジャブは伸びていた。彼はスイッチのできるボクサーだが、左構えを選んだのはジャブの差し合いに自信があったのだ。強打しているように見えなかったが、それだけ正しいフォームで打ち、無駄な力が入っていないのだろう。

 

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