なぜ女子W杯準々決勝でなでしこはスウェーデンに1-2惜敗したのか…次なる戦いのパリ五輪に向けての課題は?
3大会ぶりの世界一戴冠を目指した戦いは、道半ばで終わりを告げた。その過程で、開幕直前まで日本国内のテレビ放送が決まらなかったなでしこへの注目度も飛躍的に高まった。しかし、リベンジできる戦いが、1年後のパリ五輪で待つ。U-23代表が出場する男子と異なり、女子はA代表が臨む。そして、そのパリ五輪への切符をかけたアジア2次予選が10月下旬に始まる。
アジアの出場枠は「2」のみ。グループCに入ったなでしこはウズベキスタンで、ベトナム、ウズベキスタン、インド各代表と対戦。グループA、BそしてCの1位突破国と2位の最上位国が2つのグループに分かれ、来年2月下旬にホーム&アウェイで3次予選を戦う。
女子W杯で世界一になった2011年以降の五輪では、2012年ロンドン大会で銀メダルを獲得した一方で、2016年リオ大会はアジア予選敗退で不出場に終わり、自国開催の東京大会は準々決勝で今回と同じスウェーデンに1-3で完敗を喫している。
ならば、パリ五輪はどうか。2次予選でなでしこはまず問題なく1位突破できるだろう。グループAはオーストラリアが、グループBは韓国もしくは中国の1位突破が有力視される。3次予選の組み合わせは2位通過国を出したグループ次第で決まり、なでしこの相手はグループAの2位が進出した場合はおそらくオーストラリアに、グループBの2位の場合はその国と、グループCの2位が進出した場合はグループBの1位と対戦する。
今回の女子W杯ベスト8のオーストラリアと対戦する場合は、アウェイ戦も含めて厳しい戦いになるだろう。グループBには韓国と中国に加えて、動向のわからない北朝鮮も入っている。出場枠が少ないだけに、決して油断はできない戦いになる。
予選突破は簡単ではないが、なでしこのパリ行きを見越した上で、鈴木氏は今後の課題をこう掲げる。
「もっと両サイドから崩して、チャンスを作る攻撃に磨きをかけた方がいい。それもウイングバックの選手だけに頼るのではなく、2列目の選手が中から外へ流れながら攻撃を作る形も必要になってくる。さらに攻撃を厚くする意味で、ダブルボランチのうち1人は必ず攻撃に参加する。そういったチーム戦術を、さらに確立させていってほしい」
今大会に臨んだメンバー23人には池田太監督(52)のもと、2018年のFIFA・U-20女子W杯で優勝したメンバーから7人、昨年の同大会で準優勝したメンバーから3人がそれぞれ選出されている。その池田監督も、パリ五輪へ向けて続投が報じられている。
昨年の準優勝メンバーだった藤野と浜野は試合後、ピッチに突っ伏して号泣した。藤野はスウェーデン戦で両チームを通じてトップのスプリント回数56をマークし、左肩を負傷した影響でスウェーデン戦が今大会初出場だった浜野は同じく平均時速8.21kmを記録した。鈴木氏は2人を「間違いなく日本の中心になる」と位置づけた上で、その胸中をこう慮った。
「次はもっと強いチームにして、もっと上を、具体的には優勝を狙えるチームにしたい、自分はそのチームの中心になりたい、という気持ちの涙だと思う」
後半31分の植木のPK、同42分の藤野の直接FKがともにクロスバーに弾かれ、ノーゴールになる非情さも味わわされた90分間。一発勝負に臨む上でのメンタルと、より一直線にゴールを目指す必要性を学んだなでしこジャパンは、悔し涙を糧に再出発を期す。
(文責・藤江直人/スポーツライター)