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代打の糸原が8回に決勝タイムリー二塁打を放ち試合を決めた(資料写真・黒田史夫)
代打の糸原が8回に決勝タイムリー二塁打を放ち試合を決めた(資料写真・黒田史夫)

虎の指揮官は心理学者!…阪神の岡田監督が1回に4投手をつぎ込む“仰天継投”で破竹の8連勝…その裏にあった“心理的采配”の妙

 糸原は、バントがあるのか、エンドランで動くのか、と藤本コーチのサインを必死に凝視していた。
 だが、岡田監督は、「最初からバントなんかない。バントをさせるなら、バントする奴(小幡)をいかす。ゲッツーになっても9回裏は1番からや」と、“暗黙のサイン”で“併殺打を恐れずに思い切って引っ張れ”と伝えたのである。これも、また糸原に心理的余裕を与えた。
 カウント1-2と追い込まれてからのフォークに食らいつく。フォームを崩され片手になりながらも、ヘッドを強く返したことで、セカンドの頭上を越えるような低い打球が勢いを増して、右中間を破り、ゴロでフェンスまで到達した。一塁から木浪が一気に生還。貴重な決勝の1点をスコアボードに刻んだ。
「みんなが頑張っていたんで。延長は嫌だと思って打った。木浪も全力で帰ってくれたし、食らいついて、いいところに飛んでくれたので良かった」 
 試合後にお立ち台に指名された糸原は、言葉少なにこの場面を振り返っている。
 9回は、前日に“休養”をもらっていた守護神の岩崎。
 先頭の“韋駄天”並木にセーフティーバントを決められ、続く中村にバントで得点圏に送られたが、代打の内山、途中出場の濱田を続けて外野フライに打ち取りゲームを締めた。
 これで8連勝。夏のロードでの8連勝は、藤本定義監督が率いてシーズン2位だった1968年以来、55年ぶりの快挙だという。岡田監督は、連勝中のチームだからこそ、持ち得る心理的アドバンテージを実にうまくコントロールして采配に生かした。
「とにかく久しぶりの後攻なんでね。最後も同点OKと言うてたから。みんな、そんなきゅうきゅうになるなと。勝っているチーム。1点を守る必要はない。同点でもいいやんか。だからそういう気持ちでやっていたから、オレは楽やった」
 貯金は「22」となり、セの60勝に一番乗りとなった。2位の広島が中日で引き分けたため、ゲーム差は「6」に広がった。昨年のヤクルトのVラインが80勝。岡田監督の背番号の数字だ。残り41試合を20勝21敗で消化すれば、その80勝に到達する。ただ144試合制だった2008年には、2位の巨人に最大13ゲーム差をつけて最終的に82勝しても岡田監督は優勝を逃している。だから余裕は持っても油断はできない。
 岩崎と糸原は、こう口を揃えた。
「1戦1戦。目の前の1試合をみんなで取りに行くだけ」
 今日12日のヤクルト戦の先発は青柳。前回登板(5日の横浜DeNA戦)で約3週間ぶりの勝利投手となっている。
 岡田監督は期待を込めてこう言った。
「ブルペンが左ばっかりやからね。明日は青柳にもうちょっと頑張ってもらいます」
 阪神の勢いは止まらない。
(文責・RONSPO編集部)

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