「現実的ではないと思っているかもしれないが目標は優勝」なぜラグビーW杯仏大会に挑む日本代表メンバーの発表が上限の33人ではなく30人に留まったのか…ジョセフヘッドの戦略を読み解く
日本大会までの4年間と違って、スーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズはほぼ稼働しなかった。さらにパンデミックの影響で、2020年は一切の代表活動ができなかった。
それでも、ジョセフヘッドコーチのお眼鏡にかなう若手、中堅勢は相次いで生まれた。それがこの17人だったわけだ。
スクラムハーフの齋藤直人、センターの中野将伍、ウイングのシオサイア・フィフィタは、2020年にわずかだけ動いたサンウルブズでチャンスを掴んだ。
ロック兼フランカーのジャック・コーネルセン、フランカーのベン・ガンター、センターのディラン・ライリーは、這い上がってきた人材だ。出身地のオーストラリアでプロ契約ができなかったものの、練習生として入ったワイルドナイツで才能を開花させた。代表資格を取るまでの連続居住期間が厳格化されたなか、母国へ戻る日数を絞って代表デビューを果たしていた。
過去3度のW杯を経験したリーチ マイケルは言う。
「いままでのスコッドのなかでこのメンバーは一番、可能性はあると思っています。優勝を目指すのは絶対に正しいと思います」
今度のセレクションが大物の落選、新戦力の順当な選出と、多面的な印象を醸すなか、異例の発表となった点がある。大会登録メンバー33人のうち、今回アナウンスがあったのは30人のみだったのだ。なぜ全メンバーの発表とならなかったのか。
ロック、フランカーの位置で、候補選手のコンディションをぎりぎりまでチェックしているのがその理由だ。調整が難航していたため、会見は予定の午前10時よりも数分、遅れて始まっていた。
「怪我人は実際、もっといますが、基本的に(問題になっているの)はロックの部分です。ワーナーは練習中に肩、足首を怪我。こちらはよくなってはいますが、ウヴェ、ファカタヴァも(故障中)」とは、ジョセフヘッドコーチの説明だ。
名前が挙がった3人のうち、ファーストチョイスと見られるのはアマト・ファカタヴァだろう。
今年初代表ながら大ブレイクを果たしている。しかし8月5日の東京・秩父宮ラグビー場でのフィジー代表戦で、足首に怪我を負っている(12―35で敗戦)。本番でどこまで戦えるかはメディカルチェック次第と見られ、9月10日のチリ代表との初戦(トゥールーズ)は欠場してもおかしくない。
このファカタヴァを筆頭としつつ、21歳のワーナー・ディアンズ、日本大会組のヘル ウヴェのうち状態がよく、かつ序列で上回る面子が切符を掴みそうだ。これで最低2枠は埋まる。ジョセフヘッドコーチが、こう続ける。
「アマトは質の高い選手で、毎試合ドミネート(圧倒)してくれていた。ただ時間がない。できる限り怪我を治してほしい。ワーナーは未来と可能性がある選手だが、今年は怪我の部分でパフォーマンスが上がらなかった。…経験者とミックスしながら、決めていきたいです」
残る1枠には、フランカーのピーター・ラブスカフニの動向が絡みそうだ。
2021年秋に主将を務めるなど首脳陣からの信頼が厚いラブスカフニは、しばらく股関節の故障に苦しんでいた。
さらに7月から続いた国内でのゲームのうち、前出のフィジー代表戦で復帰も前半7分に一発退場。危険なタックルを放ってしまったためだ。
それ以降の出場停止期間は、8月11日までに「3試合」と発表されたばかりだ。適切な指導を施せば処分減免の可能性もあるが、そうなったとしても最速での解禁日は大会予選プール2戦目のイングランド代表戦(9月17日/ニース)だ。