いまだノーアーチの夏の甲子園“大砲ビッグ3”佐々木麟太郎、真鍋慧、佐倉侠史朗の本当のプロ評価とは?
第105回全国高校野球選手権の3回戦4試合が17日、甲子園球場で行われベスト8が出揃った。“大砲ビッグ3”として評判だったプロ注目の右投げ左打ちの大型スラッガー3人、花巻東の佐々木麟太郎、広陵の真鍋慧、九州国際大付の佐倉侠史朗のうち、8強へ進んだのは3回戦で智弁学園を下した佐々木一人だけとなったが、専門家の目から見てドラフト候補として誰がナンバーワンの逸材なのか。元ヤクルトの編成部長、阪神スカウトで“名将”故・野村克也氏の“右腕”としても知られる松井優典氏に3人の評価を聞いた。
花巻東の佐々木麟太郎のメジャー流フライボール(バレル)打法に疑問
“大砲ビッグ3”のうちただ一人ベスト8へ進出したのが佐々木だ。
3回戦の智弁学園戦に「3番・一塁」で先発出場し、3安打1打点の活躍でチームの5-2勝利に貢献した。1回一死一塁での第1打席は、三遊間にチョコンと合わせたつなぎのバッティングで先取点を演出。観客の度肝を抜いたのは3回一死からセンター前へ弾き返した凄まじい打球スピード。佐々木は、6回二死一、二塁からも投手の横を抜けていくセンター前へのタイムリーで貴重な追加点をあげて勝負強さをアピールした。
だが、一方で5回にはインサイドを意識させられ、ファウルでカウントを整えられてから、外角低めに112キロのチェンジアップを落とされスイングアウトの三振。
ここまで3試合の成績は、12打数6安打で打率.500、2打点を残しているもののノーアーチで長打もゼロ。12打数のうち逆方向への打球が6つあり、三振は3つ。岩手県大会から背中を痛めていてコンディションはベストではないそうだが、高校通算140本の魅力は、なりを潜めていて打球が上がらない。対戦チームの捕手がインコースに体を寄せて徹底した内角攻めを講じて長打を封じ込まれている。
ヤクルトで編成部長を務め、ヤクルト、阪神時代を通じてノムさんを支えた“参謀”としても知られる松井氏は、佐々木のここまでの打撃内容をこう見ている。
「大会前から背中に違和感を抱えているというから、そこを差し引いてみてあげなければならないのだろうが、右肩が極端に入りこんで上体だけであおるように打つ彼のメジャー流のバレル(フライボール)打法には、やはり疑問が残る。それでいてポイントを体の近くに置きすぎているために打球に角度がつかない。シンプルに来た球を強く打つというバッティングができていない。あれではホームランが出ていないのも当然。父親が監督でチームバッティングに徹しているのかもしれないが、彼の持つプロ並みのパワー、スイングスピードを生かしきれていない。3試合を見ているが、前でさばいて引っ張る打球が今のところない。相手バッテリーが内角を弱点と踏んで徹底して攻めてくるのももっともだろう。ただ、逆に言えば、そこがノビシロ。いい指導者に巡り合えば、あの潜在能力が爆発する可能性がある」
花巻東のチームスローガンは「貢献こそ活躍」という言葉だ。
「一戦必勝で戦ってきたのが我々のチームのスタイル。一人一人が考えながら、役割を意識してやってきた」
そう語っている佐々木は、チームバッティングに徹して、逆方向を意識しているのかもしれないが、その1m84、113キロの巨体を持て余しているように見える。
それでも松井氏は、佐々木を「ビッグ3の一番手」と推す。
「真鍋、佐倉と比較しても佐々木がナンバーワンだろう。パ・リーグ向きだと思うが間違いなくドラフト1位で消える逸材だと思う。ただ守れるところが一塁だけ。しかも故障が多いという点にひっかかる球団は出てくる。7球団が競合した清宮幸太郎(早実から日ハム)のように複数球団の競合にならない可能性はある」