「すべてがクレイジーだった」リバプール遠藤航が電撃移籍からプレミアデビューまでの激動の“96時間”を英メディアに激白
リバプールはもう一人の6番候補として、ベルギー代表ロメオ・ラヴィア(19)も追いかけていた。若さあふれる2人とは対照的に、遠藤は2月に30歳になっていた。しかも、シュツットガルトで3シーズン続けてキャプテンを務めることも決まっていた。それでも、電話でオファーを伝えてきた代理人に「もちろん行きます」と即答した。
そのときの胸中を遠藤は同メディアにこう伝えた。
「トップクラブが若いタレントをほしがる傾向はもちろん理解している。だからこそ、僕は『これはリバプールに移籍する唯一のチャンスだ』と言い聞かせた。すぐに返事をしなければいけない状況だったけど、決断するまで時間はかからなかった。プレミアリーグでのプレーをずっと夢見てきた僕にとって、断りを入れることはできなかった」
直後から慌ただしい“96時間”が幕を開けた。
シュツットガルトの許可を得た上で、リバプールのユルゲン・クロップ監督(56)と電話会談。16日にはリバプールが用意したプライベートジェットで英国入りし、17日のメディカルチェックを経て18日には契約書にサイン。背番号はファビーニョがつけていた「3」に決まり、19日にはプレーするために必要な労働許可証がりたとクラブから発表された。
ホームのアンフィールドにボーンマスを迎えた、現地時間19日15時キックオフのプレミアリーグ第2節で即ベンチ入り。開始3分に先制された一戦を、3トップがそろい踏みした3連続ゴールで逆転して迎えた後半18分に遠藤の交代出場が告げられた。
ただ、状況が特異だった。今夏にブライトンから加入したアルゼンチン代表MFアレクシス・マクアリスター(24)が同13分に一発退場。数的不利に陥った状況で、クロップ監督は本来の「4-3-3」ではなく、ぶっつけ本番のシステムとなる「4-4-1」に切り替え、その中心に遠藤をすえたのである。
「クロップ監督は、僕がブンデスリーガでいつも見せていたようなプレーをすればいい、という言葉だけをかけてピッチに送り出してくれました」
スクランブルデビュー直前における指揮官とのやり取りをこう振り返った遠藤は、そのまま3-1で試合を締めた。
開幕戦を引き分けていたリバプールの今シーズン初勝利を、チームメイトやサポーターと共有した心境を「クレイジー」と表現した。ここで使われた「クレイジー」は「すごい」や「やばい」といった、ポジティブな意味を持つ。
そう感じた理由を遠藤は、こう語っている。
「週の初めにブンデスリーガの開幕戦へ向けた準備をしていて、週の終わりには憧れのアンフィールドで、大勢のリバプールサポーターの前でプレーしている。ウォーミングアップの段階から、サポーターが僕の名前を連呼して特別な雰囲気を作ってくれた。ここでプレーできるのは本当に素晴らしいこと。家族や多くの友人も今日の試合を見てくれているけど、実はここには来ていない。日本人の記者たちも来られなかったんだ」