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世界陸上ブタペスト大会の男子マラソンで山下一貴はゴール直前まで5位をキープしていたが、痙攣を起こして後退、2時間11分19秒で12位に終わった(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
世界陸上ブタペスト大会の男子マラソンで山下一貴はゴール直前まで5位をキープしていたが、痙攣を起こして後退、2時間11分19秒で12位に終わった(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

“世陸”男子マラソンでメダルに迫った山下一貴はパリ五輪でリベンジを果たすことができるのか…日本の本当のレベルと懸念される代表選考レースMGCへの影響

 

世界陸上のブタペスト大会の最終日が27日、現地で行われ、男子マラソンでは山下一貴(26、三菱重工)が2時間11分19秒で12位に食い込む激走を見せた。
 スタート時(現地時間の朝7時)の気温は24℃、湿度は70%。女子マラソンが行われた前日よりもやや風が強く、過酷な戦いが予想されていた。そのなかで孤軍奮闘したのが山下だ。
 レース前の会見では、「入賞を目標にしています。暑さに関しては特に苦手意識もありません。自分のペースを守って走り切りたい」と話していた。

 5位をキープしていたゴール直前で両足がつるアクシデント

 

 レース前半は集団後方に待機。集団前方のペースチェンジにはすぐに対応せず、冷静に追いかけた。
 レース中盤以降は積極的な走りを披露。20㎞過ぎと30㎞過ぎにはトップを走る場面もあった。31㎞付近からアフリカ勢がペースアップ。本格的な揺さぶりが始まった。
 残り10㎞でアフリカ勢3人が抜け出すかたちになるが、山下は入賞を狙える位置でレースを進めていく。上位勢が徐々に崩れるなか、山下の走りは力強かった。38㎞通過時は6位で、メダル圏内まで17秒差につける。39㎞通過時は5位に浮上。メダル獲得のチャンスが高まってきたかと思われた。
 しかし、世界の舞台は甘くなかった。38㎞付近から左脚がケイレンを起こして、40㎞過ぎに立ち止る。その後はペースを上げられないだけでなく、今度は右脚もケイレン。終盤メダルに迫りながら、12位でフィニッシュを迎えて、日本勢5大会ぶりの入賞を逃した。

 ゴール直後のインタビューは、「入賞できたと思ったんですけど、なかなか難しいですね。左のふくらはぎがつってしまって、それを気にしながら走っていたら右脚もつってきて、いろんなところがつり出しちゃって……」とレースを振りかえった。それでも最後は、「また(世界大会に)帰ってきます。次はメダルを目指して頑張りたいと思います」と“イチカタスマイル”を見せた。

 駒大時代の恩師・大八木弘明総監督は、「最後の最後まであきらめないでゴールしてくれましたので、これがパリ(五輪)とか次につながるレースができたのかなと思います」と教え子の走りを評価。
 中継のTBSでスペシャルキャスターを務めた高橋尚子さんも「世界で戦えることを証明してくれた走りだったと思います」と山下の可能性に言及した。

 山下の激走は胸に響くものがあったが、男子マラソンの〝本当のレベル〟はどれぐらいなのか。
 今大会はV.キプランガト(ウガンダ)が2時間8分53秒で制して、2位はM.テフェリ(イスラエル)で2時間9分12秒、3位はL.ゲブレシラセ(エチオピア)で2時間9分19秒だった。日本勢トップ(12位/2時間11分19秒)の山下は脚のケイレンに悩まされたが、他の選手も過酷な条件は同じ。今回は有力選手の脱落も目立った。12位という順位が実力だったと判断すべきだろう。
 他の日本勢は、「引くところをしっかり判断してケニア勢についていきたい」と意気込んでいた其田健也(JR 東日本)は35位(2時間16分40秒)。「目標は8位入賞。自分の持ち味である攻めの走りを出せればなと思っている」と話していた西山和弥(トヨタ自動車)は42位(2時間17分41秒)。ふたりは15㎞付近で後退するなど、まったく勝負にならなかった。 山下と其田は今年3月の東京マラソンで快走。山下が日本歴代3位の2時間5分51秒、其田が同4位の2時間5分59秒。西山は今年3月の大阪で初マラソン日本最高記録となる2時間6分45秒を叩き出している。
 日本勢のタイムを考えると、すごく魅力的なエントリーに思えただろう。しかし、近年はシューズの進化もあり、マラソンの記録が急上昇している。このタイムは2023年の世界リストでいえば山下が31位、其田が36位、西山は54位(※2022年の世界リストに当てはめると、山下は41位相当、其田は45位相当、西山は74位相当)。持ちタイムでは世界トップと真っ向勝負するのは難しい状況だった。

 

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