なぜJリーグで危険なプレーを見過ごす誤審が生まれたのか…審判委員長が神戸のMF齊藤未月が重傷を負った柏レイソル戦でレッドカードを出さなかった誤審を認め謝罪
日本サッカー協会(JFA)審判委員会のレフェリーブリーフィングが28日に行われ、扇谷健司審判委員長(52)が、ヴィッセル神戸のMF齊藤未月(24)が左膝に全治約1年の重傷を負った19日の柏レイソル戦での誤審を認めて謝罪した。接触プレーで柏のDFジエゴ(27)にレッドカードが提示されるべきだったという見解を示した。問題の場面では今村義朗主審(46)がファウルを取らず、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)も介入しなかった。選手生命を脅かす危険なプレーが見過ごされる誤審はなぜ起こったのか。
「正しいジャッジが行われなかった。申し訳ない」
物議を醸し続ける判定が誤審と判断された。
直近のJリーグの試合で起こった事象について、審判団によるレフェリングや判定に関するさまざまな情報をメディアとの間で共有し、相互理解を深めていく場として、JFAの審判委員会はレフェリーブリーフィングを不定期に実施している。
通常はJ2やJ3も含めて複数の事象がピックアップされるなかで、28日に東京・文京区のJFAハウスで行われた今シーズンの第7回ブリーフィングは内容が大きく異なった。取り上げられたのはひとつだけ。19日にノエビアスタジアム神戸で行われたJ1第24節、神戸対柏の前半22分に神戸の齊藤が負傷退場した場面だった。
ブリーフィングの冒頭で、扇谷委員長が見解を発表した上で謝罪した。
「あの場面についていろいろと議論を重ねてきたなかで、われわれの見解はレッドカード。正しいジャッジができなかったことを本当に申し訳なく思っています」
問題の場面にまず触れておきたい。
敵陣のほぼ中央で直接FKを獲得した神戸が、柏ゴール前の左サイドへふわりと浮かしたボールを送る。味方の折り返しにフリーで走り込んできたのは齊藤。右足で放ったシュートは相手のブロックに防がれたが、こぼれ球に素早く反応した。
今度は左足でシュートを放とうと突っ込んでくる齊藤を阻止しようと、左側からジエゴが、右側からはMF戸嶋祥郎(27)が飛び込んでくる。左膝をジエゴと戸嶋に挟まれた齊藤はそのままピッチに倒れ込み、担架で運び出されて交代を余儀なくされた。
2日後の21日に神戸が齊藤の検査結果を発表した。大きな衝撃を受けた左膝の関節脱臼と複合じん帯損傷、そして内外側半月板損傷。複合の内訳は前十字じん帯断裂、外側側副じん帯断裂、大腿二頭筋腱付着部断裂、膝窩筋腱損傷、内側側副じん帯損傷、後十字じん帯損傷で、全治までは「現時点で約1年の見込み」という前例のない重傷だった。
神戸はさらにJFAの審判委員会へ意見書を提出したと明かした。選手生命が脅かされる場面で今村主審がファウルを取らず、VARも介入しなかった状況に、神戸の三木谷浩史会長(58)は自身のX(旧ツイッター)を介して徹底抗戦を宣言した。
「これをそのままにするほうが危険だと思う。故意か否かではなく、このような危険なプレーを防ぐためにレッドカードがあるのだと僕は思う。(中略)JFAに睨まれようと、なんと言われようとこれはうちのクラブとしては放置はできません」
結果としてジエゴのタックルに対しては、左足を高く上げ、さらにスパイクの裏で齊藤の左膝に接触していた点で、レッドカードが提示されるべきだったという見解が審判委員会から示された。要は誤審が認められたことになる。
一方で疑問も膨らむ。なぜ試合中は見過ごされたのか。