「井上尚弥をぶっ倒す前に…」と挑戦状を叩きつけたカシメロが10.12有明で日本初上陸…亀田和毅、比嘉大吾との交渉決裂で対戦相手は“大物食いの曲者”元世界王者の小國以載
小國は35歳で1年半のブランクがある。一方のカシメロは減量苦から解放されたスーパーバンタム級で連勝と勢いに乗る。当然、小國が圧倒的に不利だ。
だが、昨年5月に小國の3年ぶりとなる復帰戦の相手を務め、負傷ドローに終わった栗原は「小國不利説」を一蹴した。
「対戦した僕からすると小國さんに勝機はある。不利とは思っていない。得意な相手じゃないかと思っている。カシメロはファイトスタイル的に突っ込んでくる。一発のパンチ力があるが、そこを潰してしまえば、攻撃力を消せる。小國さんは、攻撃の消し方の引き出しが多い。そこにアジャストできて勝てるんじゃないか」
小國は似たようなシチュエーションでジャイアントキリングを起こしたことがある。7年前の大晦日。当時無敗で全試合KO勝利していたIBF世界スーパーバンタム級王者のジョナサン・グスマン(ドミニカ)に挑戦して判定勝利。圧倒的不利の予想を覆してベルトを奪った。強打のボクサーをいなして空回りさせるのが得意。だから、人生2度目の大金星をゲットする自信がある。
しかもカシメロは「小國の映像なんか見ていない。身長はあるがパワーはない。スキルはオレが上回っている」と完全に舐めきっている。そこに油断がある。
さらに小國は秘策を用意していることを明かした。データ解析会社の協力を得て、カシメロのあらゆるデータを分析して“丸裸”にし、そのデータを活用するというのだ。
「プロ野球と一緒ですよ。例えば、2ストライクからどんなボールを投げるかの傾向や癖があるでしょう。それをボクシングにも応用できないかと今データを出してもらっているんです。当然、僕への対策をしてくるのでデータ通りになるかわからないが、それを頭に入れておくだけで違う。元々、僕はそこで作戦を練るタイプ」
ID野球ならぬIDボクシング。
ただプロ野球と違ってボクシングの場合は考える時間が少ない。
だが、小國は「例えば僕が攻撃を仕掛ける際、こういうステップ、こういう形で入ったときにアッパーが来るとか、どんなブロックをするとかのデータは使えると思うんです」と言う。
小國は、本来、そういう相手の癖やパターンを研究して戦術を練るタイプだ。7年前のグスマン戦では「徹底して打ち終わりに合わせる」という作戦を貫いて番狂わせを起こした。
「でもグスマンとは違う。厄介さでいえばカシメロ。野性的だしスピード、爆発力は凄い。ディフェンスもザルのように見えて芯で受けない。優位に立つ戦いのうまさがあり、ポイントの作り方も休み方も知っている。そりゃ怖いですよ」
小國は、先週スパーを開始したばかりだが、まだ1年半のブランクの“カン”を取り戻せておらず、比嘉との6ラウンドスパーでパンチをもらい、右目には青タンができていた。それでも「その前のブランクは3年ですからね。それに比べたら早いですよ」と不安はないいう。
35歳。グスマンから奪った世界のベルトを明け渡した岩佐亮佑も引退した。
「負けたら?ラストファイトになるでしょう。でもいい試合ができて意外とできたやんとなると話は変わる。全然レベルちゃうやんと思うとすんなり辞める。やってみんとわからないですよね」
それだけの覚悟がある。
実は、浅草橋に「BeSTAR FITNESS」というアマチュアのボクシングジムを開業。運営は軌道にのっていて負けても失うものはない。それもまた小國の強みだろう。もちろん勝てばカシメロに代わって井上へ名乗り?と思いきやこう返した。
「井上選手の名前を出すなんておこがましい。井上選手が4団体を統一して、その後にベルトを返上するのを待って、そのベルトを狙いたい。カシメロに勝てばWBOでランク入りするので、できればWBOを返上してくれへんかな」
すでにモンスターとの対戦に気がいって小國など眼中にないカシメロに35歳の元世界王者が一泡吹かせるのかもしれない。