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井上尚弥の大親友で元Jリーガーの山口聖矢が鮮烈の1ラウンドTKO勝利デビュー(写真・山口裕朗)
井上尚弥の大親友で元Jリーガーの山口聖矢が鮮烈の1ラウンドTKO勝利デビュー(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥の“大親友”元Jリーガーの山口聖矢は29歳で衝撃の1回TKO勝利デビューを飾ることができたのか…モンスターの金言

 Jリーガー時代の山口のポジションはディフェンダーだった。山梨学院高(当時・山梨学院大附属高)から関東学院大へ進み、地域リーグのサウルコス福井に所属し、その後、SC相模原でJリーガーになった。大学時代には日本代表の伊東純也との対戦経験もある。だが、J1ではプレーできず、2018年のシーズンを最後に26歳で引退した。相談を受けた井上尚弥は「先が見えずにサッカーで稼げないのであれば現役続行は反対。第2の人生へ進むのならば早い方がいい」と引退を勧めた。 
山口は親友の言葉に納得して実家が経営している自動車整備工場で働きだした。
 だが、サッカーという生きがいを失った山口は、それから2年間「何か刺激が欲しい」と思い悩む。そんな親友の苦悩を近くで見てきた井上から「ボクシングをやってみたら」と意外な提案を受けたのが、昨年の正月。山口は28歳にして一念発起。昨年11月にプロテストに合格し、いくら基礎体力があるとはいえボクシング独特のトレーニングに四苦八苦しながら、約9か月かけて今回のデビュー戦へ向けて準備してきた。
 この日のゴールドとブルーの美しいトランクスは、井上尚弥が4年前に英国グラスゴーで行われたWBSSの準決勝で、当時IBF世界バンタム級王者で、つい先日に返り咲いたエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を倒した際に用意していた予備のトランクス。それを譲り受け、ベルト付近の名前だけを変えて、今回のデビュー戦に使用した。
「サッカーとはまた違う緊張」に包まれたが、井上尚弥からもらった「深呼吸して」の助言を思い出しリングに上がると、深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせた。
「パンチはもらわなかった。距離も早めに把握できたし、そこに手ごたえがある。周りの方々に強いと言ってもらえる左フックは出せなかったので。それを次に」
「打たせずに打つ」が、師事する井上家のモットー。ステップワークを駆使して、ディフェンス面でほぼパーフェクトだったことが誇らしい。
 遅咲きの元Jリーガーは来月の誕生日で30歳となる。「世界」とは口にはしないが、来年参加する予定の新人王戦が、まず当面の目標だ。
「やるからには負けたくない。かといってプロなのでお客さんが心をうたれるような試合をして勝ちたい。井上家と一緒に練習させてもらっている以上、そこにはこだわりたい。新人王を取ることが、そのひとつの結果になると思う」
 ライト級でエントリーする予定。大親友の井上尚弥に導かれ、遠回りしてボクシング界に登場した山口は、とんでもない大物になるのかもしれない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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