井上尚弥が明かした「Sバンタム級で戦うべき4人」とフェザー級への挑戦…メイウェザーが発言したドーピング疑惑には「なんで?」と怒り?!
実は、今回のフルトン戦ではJBCの厳格なドーピング検査に加えて、VADAの任意検査が入っていて井上は2度の抜き打ち検査を受けていた。一度目は大橋ジムで井上が練習している最中に、突然、謎の外国人が現れ「フルトンのスパイか?」と大騒ぎになったが、それはVADAの検査員だった。
検査員はどこで調べたのか、井上の自宅を張り込んで抜き打ち検査もした。五輪競技なみの厳しいドーピング検査をクリアしている井上が、メイウェザーにいちゃもんをつけられる筋合いはない。おそらく、あまりにも井上が強すぎるための難癖だろう。
メイウェザーは愛弟子のWBC世界ライト級王者であるガーボンタ・デービス(28、米国)と、井上の対戦を熱望しており、メイウェザー軍団と井上との“抗争”を盛り上げたいのかもしれない。だが、あらぬ疑念を投げかけられた“モンスター”は、どこかで、ひとこと釘をさしておきたかったのである。
井上は4人目の対戦候補としてアフマダリエフの名前をあげた。大方の有利の予想に反してタパレスに僅差判定で敗れた元王者だ。試合後、アフマダリエフ陣営は、ジャッジに不満を漏らした。2年前には引退した岩佐亮佑に母国で5回TKO勝利している。彼もサウスポーだが、この階級での実力は「フルトンの次」との評価もあり、WBAはアフマダリエフと同3位で無敗のケビン・ゴンサレス(25、メキシコ)に対して挑戦者決定戦を指令した。当初、同級1位の亀田和毅(32、TMK)との対戦を指令していたが、亀田がフェザー級への転級を理由に辞退したため、挑戦者決定戦のカードが変更になった。アフマダリエフとの対戦は彼が指名挑戦権を得ることが最低条件となる。
そして、その先にあるのがフェザー級への挑戦。
「4選手をしっかりクリアしたら、自信を持ってフェザー級へいける」
これまでフェザー級挑戦については、ハッキリ明言してこなかったが初めて断言した。その理由はフルトン戦の試合内容にあるという。
「フェザー級寄りのフルトンと不安材料にしていた体格差を何も感じずに試合ができた。少しでも不安を感じていればフェザー級へのこだわりはなくなるが、1ミリも(不安は)なかった。だとしたら自分の限界はここではないと感じた」
フェザー級への転級を考えていた1m70の身長があるフルトンは、スーパーバンタム級の中では限りなくフェザー級に近い体格を持つボクサーだ。そのフルトンを相手に1.8キロの壁を越えてフィジカルで互角に勝負できたことがフェザー級挑戦を決意する裏付けになった。
ロンドン五輪銅メダリストの清水聡(大橋)をスピードとテクニックで圧倒して5回TKO勝利した五輪連覇のWBO世界フェザー級王者のロベイシ・ラミレス(キューバ)、フルトンとフェザー級で再戦する予定だった現WBC世界フェザー級王者のブランドン・フィゲロア(米国)も、モンスターとの対戦を熱望しメディアに公言している。
「フルトンはフェザー級寄りではあるがハードパンチャーじゃない。フェザー級にはハードパンチャー、もっとやばい奴もいるんでね」
フェザー級では未知の領域に挑むという楽しみがある。
年内にタパレスをかたづけ、来年に残る3人のうち2人を仕留めたとすれば2025年には3人目をクリアして5階級目となるフェザー級への挑戦が始まるだろう。現在、30歳の井上は「2、3年後の32、33歳までには(フェザー級に)いけるのかなと思う」との青写真を明かす。
トレーニングやスポーツ医科学の進歩に伴い、ボクサーのピーク年齢は確実に延びており、その頃、モンスターは、ちょうど円熟期を迎えるかもしれない。5階級制覇を達成すれば、契約ウェイトでの試合になるのだろうが、ガーボンタ・デービスやワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)といったビッグネームとのドリームマッチも現実味を帯びてくるのかもしれない。
井上は、すでにジムワークを再開している。
「ぼちぼちスパーリングも始めている」という。タパレス戦の正式決定を待ち、10月中旬には、走りこみ合宿を張る予定だ。