阪神が最下位中日を蹴散らしてマジック「14」…目標のあるチームと目標を失ったチームの“違い”につけこんだ岡田野球とは?
阪神が5日、バンテリンドームでの中日戦に8-2で快勝して4連勝、優勝マジックを「14」に減らした。ヤクルト戦で死球を受けた近本光司(28)が欠場したが代役で1番を務めたルーキーの森下翔太(23)が2安打でいずれも得点にからみ、4番の大山悠輔(28)が3打席連続で四球を選ぶなど、今季の阪神を象徴するような粘り強い野球で大量8点を奪った。先発の西勇輝(32)は7回を2失点にまとめて6月27日の中日戦以来、約2か月ぶりとなる6勝目をマークした。
ヒット数は阪神が8本で中日は9本だった…
目標のあるチームと目標を失ったチームの“違い”に岡田阪神が容赦なくつけこんだ。ヒット数は阪神が8本で中日が9本。マジックを「14」に減らした首位の阪神は本塁打もなかったが、打線をつないで大量8点を奪い、借金「26」で最下位に低迷する中日は細川に21号ソロが出たものの2点しか得点できなかった。
その差が生まれたのは四球と失策である。阪神は4番の大山が3打席連続で四球を選び、これで今季87個目としてリーグの四球数トップを独走。対する中日は最終回にブルワーからビシエドが選んだ1個だけだった。
象徴的だったのが1回の阪神の攻撃である。3日のヤクルト戦で右脇腹に死球を受けた近本が大事を取って欠場となり、代わって1番に抜擢された森下が、カウント1-2と追い込まれてから、涌井の変化球に反応して三遊間を破るヒットで出塁した。続く中野にカウント2-2から岡田監督はエンドランのサイン。外角高めの甘いチェンジアップにバットをかぶせると打球は右中間を抜けていく先制のタイムリースリーベースとなった。
エンドランのセオリーは「打球を転がせ」である。だが、岡田監督の持論は違う。「ライナーを打て」。阪神の2軍監督時代にパドレスの指導マニュアルという文献を手に入れ、時間をかけて丹念に読み込むと、そこには「エンドランではライナーを打つ意識を持て」と書かれていた。ゴロではなくライナーを打とうと意識すると、打者のスイングがレベルになりシャープさが増すという理論。中野の右中間への打球は、まさにその発想の転換の一打である。
阪神は、さらに一死三塁から大山、佐藤が連続四球を選んだ。満塁にするとノイジーのセカンド正面への強烈な打球を村松がエラー。バウンドが合わずに腰高となり、その打球は、グラブの下をすり抜けていったのである。1点を追加し、続く坂本が確実に犠飛を決めて3点の先制パンチを食らわせることに成功した。
現役時代に複数のタイトル獲得経験のあるプロ野球OBの一人は、「起こるべくして起こったミス」と指摘した。
「涌井は四球を出す度に自分のホームだというのにマウンドを気にして言い訳めいた態度を見せていた。攻める気持ちが見られずテンポも悪く1回からボール、ボールでは野手にリズムは生まれない。ノイジーの打球は、捕って当たり前、併殺の取れる打球ではあったが、あまりにも、涌井の投球にリズムがないために足が動かずにバウンドを合わせることができなかった。1年目の村松の失策だけを責めることはできないが、チームとしての集中力の差が如実に出た。目標のあるチームと、それがないチームの差だと思う」
立浪監督は、その涌井を2回で下げて加藤を代打に送った。竜の悩める指揮官は何らかのメッセージをチームに伝えたかったのだろう。だが、その采配も選手には響かなかった。2番手の上田も、3回に先頭の大山にまた四球を与え、佐藤、ノイジーの連打、木浪の犠飛で2点を失った。
百戦錬磨の岡田監督は目標を失ったチームの攻略法を熟知していた。