「本当にデビューしたばかりなのか?」ボクシング転向第2戦を前に那須川天心がカシメロ、ロマゴンとの世界戦経験のあるメキシコ人ボクサーを公開スパーで圧倒
8月下旬に来日した2人は、ここまでそれぞれ16ラウンドほどのスパーリングをこなしてきたが、粟生トレーナーは、「初見のボクサーは、まず天心の速い動きとリズムに対応できない。世界ランカーの彼らでさえ慣れるまでまったくパンチを当てることができなかった」という。本来のスピードに加え、パンチの威力は間違いなくアップしていた。そして何より距離感が非凡で、常に足が動き、パンチを打った後にありがちな身体の流れもない。だからコンビネーションもスムーズに出る。
天心にも手ごたえがある。
「疲労はあるがマックスの近い状態。前回のスパーを見てくれた記者さんは違いがわかると思う。デビュー戦とは全然違う。動きにしろ、パンチの打ち方にしても、ちゃんとボクシングになってきたなと、自分でも実感できる」
この試合に備えて、帝拳恒例の千葉成田のゴルフ場を使っての走り込み合宿を2度行い、8月にはスパーリング中心の2週間の米国合宿。スパー数は「前回の倍以上」(天心)の100ラウンド以上を消化してきた。8回戦の戦いに対応するため8ラウンドのスパーを5度もこなす、ハードなトレーニングを乗り越えてきた。
今回の試合のテーマは「倒す」である。
「今回は倒します。チームからは、それを意識すると固くなるので『自然体で』と言われているが、心の中では倒しにいく」
4月のボクシングデビュー戦では日本バンタム級2位の与那覇勇気(真正)からダウンを奪うもののKO決着はできなかった。
「ボクシングの形にはなった。だけど完成しているかと言えば完成していなかった。今回は完成とは言わないが、それに近いスタイルはできる。ただ前回の試合の反省はしていない。毎回マックスを出している。見ている人も反省している試合を見せられてもねえ。次につながる課題はあったが、反省とか後悔はない」
いかにも天心らしい。
チームでKOできなかった原因を分析しステップインと共にナックルを返すことを課題に掲げた。グローブの中で拳を握るタイミングと「絞るようにしてナックルを返す」(粟生トレーナー)という修正を試みた。本来のスピードを生かすパンチとスナップを効かせるパンチを打ち分けることができるのが理想だが、今は倒すパンチを意識的に取り組んでいるという。スパー相手のエスピノサも「きっちりと拳を固めてヒットポイントに当てる技術がある」と、ナックルが決まっていることを証言した。またリズム、ペースの切り替えの極意もつかんだ。粟生トレーナーは「自然にやれば自然と倒れる、期待してもらっていい」とKO決着を約束した。