なぜ阪神の岡田監督は同点の7回一死満塁で伊藤将司に代打を出さなかったのか…8連勝でマジックを「5」に減らした裏にある“温情采配”の理由とは?
阪神が10日、甲子園で2位の広島を5-1の逆転勝利で下して8連勝、マジックを「5」に減らした。先発の伊藤将司(27)が8回、111球を投げて無四球の3安打9奪三振1失点の好投で10勝目。このカードで村上頌樹(25)、大竹耕太郎(28)に続き、白星を2桁に乗せた。岡田彰布監督(65)は1-1で迎えた7回一死満塁のチャンスで伊藤に代打を送らないという“温情采配”。選手の個人記録を大事にする指揮官の独自哲学が“アレ”に向けてカウントダウンに入ったチームを一丸にしている。
伊藤が指揮官に続投を志願
超満員の甲子園がザワザワした。
1-1で迎えた7回一死満塁。ネクストには、代打の切り札の糸原が出てきたが、岡田監督はベンチへ戻らせて、九里との投手戦を演じていた伊藤を、そのまま打席に立たせたのである。岡田監督は新井監督の方に向かってニヤッと笑った。
「普通なら代打」
そう言う岡田監督が、舞台裏で起きていたことを明かす。
「(伊藤が)『最後までいかして下さい』と言うから『もうお前で決めて来い』と言うたんや」
伊藤は10勝がかかっていた。
「頌樹、大竹さんが2人連続で10勝していたので負けられないと思って投げました。ちょっと意識していました」
伊藤が続投を志願した理由を岡田監督もくみ取っていた。
「ひとつアウトで満塁で近本でいい」と、バッティングのいい伊藤を打席に送りだしたが、結局、5-4-3の併殺打に終わり、九里はガッツポーズでベンチへ下がった。
だが、その岡田監督の温情采配に伊藤は8回のピッチングで応えた。ギアを入れ直して5回に先制6号ソロを許したマクブルーム、田中、會澤を三者凡退に抑えて、その裏の勝ち越し劇への流れを作った。
先頭の近本が四球で出塁、中野がバントで送り、森下を迎えたところで広島は、珍しく石原バッテリーコーチがマウンドへ向かう。森下には6回に同点タイムリーを打たれていた。おそらく石原コーチは、バッテリーに森下との勝負か、9月の打率1割台と低迷している大山との勝負かを選択させたのだろう。新井監督は、森下を申告敬遠で歩かせ、大山との勝負を選んだ。大山はセンターフライに倒れて二死となったが、佐藤が四球でつなぎ、7回に続き再び満塁となった。ノイジーの代走から入っていた島田に代えて岡田監督は「(7回一死満塁で)カモフラージュで出した(糸原が)残ってたんで」と、代打・糸原をコールした。佐藤のカウントが3-0になったところで糸原の起用を決めたという。
「将司が頑張ってたので、この回で決めるという気持ちで打った」
糸原は、カウント2-1から高めの浮いた変化球を仕留めた。“運ぶ”という表現がピッタリのバットコントロールでセンターへ打球を運んだ勝ち越しの2点タイムリー。岡田監督も「いい時に打つ」と左の切り札の一打を称えた。
熱投を続けていた九里の127球目だった。無得点に終われば9回も行く気でベンチ前でキャッチボールしていた伊藤を安藤投手コーチがベンチへ下がらせた。
さらに代わった大道から坂本が四球を選び、満塁打率.467、17打点もある木浪がセンターへのダメ押しの2点タイムリーで続き、9回は、岩貞が一人走者を出しながらも無失点に抑えて、伊藤の10勝目をアシストした。