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18年ぶりの優勝へのカウントダウンが始まった阪神の岡田監督の何がどう変わったのか(写真・黒田史夫)
18年ぶりの優勝へのカウントダウンが始まった阪神の岡田監督の何がどう変わったのか(写真・黒田史夫)

なぜ“アレ”へ秒読み段階に入った阪神の岡田監督はベンチでよく笑うのか…10年の充電期間を“肥やし”にした指揮官の変化

 監督就任2年目の2011年10月18日のソフトバンクとの最終戦。勝てば3位をキープして、CS出場が決まるという大一番だった。岡田監督は、ここまで10勝3敗のエース金子を先発に立てた。ソフトバンクはすでに優勝を決めていた。本来ならモチベーションの違いが歴然と出るはずだったが、ソフトバンクも勝てば楽天の田中将大の19勝に並び最多勝タイトルの獲得となるホールトンを先発に立てて“本気”で勝ちにきた。10年間でBクラスが9度と低迷していたオリックスの選手はプレッシャーでがんじがらめになっていた。
 抜群の制球力を誇る金子が、立ち上がりに四球絡みで先制点を献上して、結局、4失点。打線はバルディリスのソロ一発だけに沈黙して、1-4で敗れ、ゲーム差はなし、勝率わずか1毛差で西武に及ばすCS出場権を失った。
「あの金子がいきなり四球やからな。プレッシャーよ」
 韓国プロ野球界から大砲のイ・デホらを補強して優勝を狙った翌年には、ケガ人なども続出して歯車が狂い、序盤から低迷。5月には危機感を抱いた岡田監督が、遠征先のホテルの自室にチームの主軸3人を呼び「どんな気持ちで野球をやっているのか」と尋ねた。返ってきた答えが「監督が怖くて萎縮して打てないんです」だった。
 岡田監督は選手を直接怒ったことはない。だが、負けが込むとベンチで仏頂面になるし、コーチへの言葉も激しくなる。監督の顔色を窺い、その言動に聞き耳を立てていた選手は、監督の無言のプレッシャーをはね返すメンタルの強さを持ち合わせていなかった。結局、チームは浮上することなく岡田監督は9月に屈辱的な途中解任を通告される。
「考えられへんかったわ。負け癖、経験不足、プレッシャー。それにフロントの勘違いもあったわな。チームがバラバラになるとは、ああいうことなんやろな」
 そこから10年間、ネット裏から野球を見てきた岡田監督は、今の時代の選手の考えや、野球への取り組み方の変化を敏感に感じ取ってきた。
「オレらの時代と違って飲みに行く選手も少ないし真面目なんよ」
 2023年の阪神は若手中心のチームだ。2005年の優勝時は、金本、赤星、今岡ら実績のあるタイトルホルダーが主軸を固め「任せて」野球ができた。だが、今回は違う。若手に経験を積ませ、勝負どころで強い選手に成長させるために、できるだけプレッシャーを取り除いてやることを意識するようになった。
 それが「普通」という岡田監督の言葉に象徴される野球だ。
 裏表のない人なので、試合後のコメントでは、選手を辛辣に評する機会も少なくはない。だが、結果論ではモノは言わない。そして「楽しむ」という言葉を多く発するようになった。
 もちろん岡田監督の変化は戦術面でも多くある。

 

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