阪神の西勇輝が“魂の完封”で巨人を倒してマジック「3」…なぜ岡田監督は「1-0」勝利を理想とするのか?
阪神が12日、甲子園球場で行われた巨人戦に1-0で勝利して9連勝、マジックを「3」に減らした。先発の西勇輝(32)が二塁を踏ませず2安打完封勝利。岡田彰布監督(65)が「今年一番のピッチング」と称えたベテラン右腕の力投で、最短14日優勝の可能性が出てきた。1-0勝利は、岡田監督が「監督が何もせず勝つ理想の試合」と定義づけているスコア。“アレ”への秒読み段階に入ったチームを象徴するようなゲームになった。
「今季一番のピッチングやろ」
フィナーレはあっけなかった。
1点差で迎えた9回二死一塁。門脇の打席で原監督は、カウント1-0からの2球目に代走の重信に盗塁を仕掛けさせた。だが、スタートを頭に入れていた西勇―坂本のバッテリーはスローイングのしやすい外角のシュートを選び、坂本が二塁ベース上へ向かってスロー。木浪のタッチは、追いタッチとなったが、頭から滑り込んだ重信が、それを避けようとしたためベースに手が届かなかった。そこでゲームセット。原監督は苦笑いを浮かべ、岡田監督は、何食わぬ顔でベンチを出てきた。
昨年の8月19日の巨人戦以来の完封勝利となった西勇はマウンド上でまるで大記録を達成したかのように坂本と抱き合い、満面の笑みを浮かべて右手でガッツポーズした。
「9回のマウンドに上がっている時、歓声がすごくてちょっと泣きそうになりました。まだ勝ってもいないのに」
わずか2安打の117球の完封勝利。2回には先頭の岡本を四球で出したが、坂本を投ゴロ併殺打。3回も先頭の岡田にレフト前ヒットを許したが、吉川を遊ゴロ併殺打に打ち取り、二塁を踏ませなかった。キレとコントロールは野球の教科書のような内容。その西勇のテンポと内野守備が見事にリンクした。
「今日は西に尽きる。ちょっと危ない球は2球くらいじゃないか。ほんと低め低めでコントロールがよかった。今年一番のピッチングじゃないか」
岡田監督も西勇の“魂の完封勝利”を絶賛した。
結果の出せなかった西勇を2軍に落としたのは今季2度。2度目は7月5日で、約1か月半、1軍にお呼びがかからなかった。実績のあるエースであろうとベテランであろうと岡田監督に忖度はない。昨季の投手3冠である青柳にも2軍落ちを命じた。その方針は、“青柳さん、西さんでさえ平等に落とされるんだ。逆にいえば、オレたちでも結果さえ出せばチャンスがある”と1、2軍の空気を変えた。そして何より落とされた彼らに危機感を植え付けた。村上、大竹、伊藤の3人が広島戦で揃って10勝目をマークした。置いていかれないように気合が入るのも当然だろう。
西勇は8月22日に再昇格してからは2勝0敗である。
「前半戦から失敗ばっかりして迷惑かけてチームの足を引っ張っている自分がいました。結果でしかこの世界は示すことができない。仲間やいろんなサポートのおかげで、またこうやってマウンドに上がることができて、たくさんの方々にたくさんの応援をしていただいてほんとに感謝の気持ちでいっぱいです」
西勇はお立ち台でそう言葉を絞り出した。