なぜラグビー日本代表はイングランドに不運な“ヘディングアシスト”トライを許し敗れたのか…サモア、アルゼンチンとの残り2試合で決勝T進出の可能性はあるのか?
ラグビーW杯フランス大会のプールD第2戦が17日(日本時間18日)、ニースで行われ日本代表がイングランド代表に12-34で敗れた。日本代表は、事前の準備とハードワークで後半13分には1点差にまで詰め寄ったが、再三のミスに泣いた。対するイングランド代表は、要所で加点して終盤は巧みにゲームをコントロールして試合を終わらせた。
「下を向く時間はない」
ナンバーエイトの姫野和樹主将は、何とか言葉を絞りだした。
「率直に悔しい気持ちが大きいです。ただ、下を向く時間というのはもうないので…。まだワールドカップが終わったわけではないので、しっかりと準備をしないといけない」
前日に雨が降った会場のスタジアム・ド・ニースは、試合開始時間の21時が近づいても蒸し暑かった。BGMには、重低音のロックのほか、日本代表がリクエストした長渕剛の『とんぼ』が流れる。日本代表はウォームアップを終えると互いに仲間の肩に手を置きながらロッカーへ引き上げた。その表情は静謐な空気を醸しだした。好試合を予感させ、実際、後半15分までは1点差の12―13で競った。13―52と大敗した昨秋の対戦時と比べ身体衝突を伴うプレーで手応えがあった。
8対8で組み合うスクラムでは、ほとんど押し込まれなかった。ぶつかり合う前の段階から、首尾よく相手との間合いを詰められたからだろう。
3―3で迎えた前半16分には、敵陣中盤右で相手ボールをプッシュできた。その流れでキックチャージをもたらし、一気に敵陣ゴール前に侵入。間もなく掴んだ攻撃権を活かし23分に6―3と勝ち越した。
守りも鋭かった。特に9―10と1点ビハインドで迎えた前半35分以降から試合終了間際までは、自陣22メートルエリアで堅陣を敷いて相手のエラーを誘ったり、ゴール前まで迫られながらもモールへ鋭くプレッシャーをかけたりして失点を防いだ。後半2分には姫野が得意のジャッカルで自陣22メートル線上でのピンチを防いだ。その2分後に再び似たエリアで守勢に回ったが、素早く防御ラインを敷きフッカーの堀江翔太が好タックル。攻守逆転に繋げ、「ニッポン」コールを送るファンを感動させるディフェンスを続けた。
懸念されていた高い弾道のキックの捕球対応は、前半こそ後手を踏むも、後半からは改善。捕球役の周りで複数の選手が列をなす動きを徹底し、競りにくる相手の圧力を最小化できた。
準備していた作戦も機能した。防御の裏へキックを放ち、相手のカバー役へ圧をかけたり、タイミングよく駆け上がった受け手にそのままキャッチさせたりした。
W杯前の前哨戦でチームは中盤からも果敢にランとパスを仕掛けてきたが、スタイルを変えていた。突然、プレーのガイドラインを書き換えたあたりに、大一番へのかける思いを滲ませた。