【緊急連載3】幻に終わった9年前の岡田監督誕生劇と阪急阪神HD角和夫CEOとの“グ―タッチ”…巨人の原監督は「阪神って不思議な球団ですね」と言った
そして昨年5月の某日。
岡田監督は“名門”西宮カントリーで、角和夫CEO、1985年の日本一監督、吉田義男氏、三井住友フィナンシャルグループの名誉顧問である奥正之氏の4人でラウンドし、その後に宝塚市内のホテルで会食をした。
メインバンクの三井住友銀行で頭取まで務めた関西経済界の重鎮の奥氏は、大の虎ファンで、吉田氏の現役時代からのファンで交流があり、岡田監督の後援会組織「道一筋会」の立ち上げメンバーでもある。
「監督オファーなんかないよ。今の阪神をどう思うかという、野球談議よ。17年も優勝できてへんからね。それを本当に心配していた」
阪神を愛する人たちの憂いを前に岡田監督は自分の見解を語った。
将来の監督候補としての資質は誰が持っているかまでの奥深い話になった。だが、一言も、次期監督に関する話はなかった。だが、その会食が終わり、迎えの車に見送る際に岡田監督は、角CEOと2人きりになった。角CEOは岡田監督にグ―タッチを求め「また秋にな」とだけ言ったという。
角CEOと岡田監督は早大の先輩後輩の関係で年に一度のゴルフ交流も続いていた。角CEOが岡田監督の手腕を認めるきっかけになったのは2005年の優勝実績はさることながら、オリックス監督就任時に出版した「オリの中の虎」という著書だった。その野球理論、マネジメント論に心酔した。阪神の試合を毎試合、テレビ観戦するわけではないが、たまに聞く岡田監督の解説にも感心させられることが少なくなかったという。
後日、岡田監督のもとに奥氏から当日4人で撮影した写真を添えた自筆の手紙が届く。そこにはタイガースの優勝を心待ちにしている一人のファンとしての熱い思いがしたためられていた。たとえ、間接的にでも、監督要請は、何ひとつなかったが、岡田監督は覚悟を決めつつあった。
しかし阪神フロントの動きは違っていた。平田2軍監督の昇格案で1本化されていた。オールスター期間中に平田監督就任の記者発表の準備まで進めていたことは、あまり知られていない。(次回緊急連載4へ続く)
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)