なぜ角田裕毅は母国凱旋のF1日本GPで12位に終わり入賞を逃したのか…荒れなかったレースで顕著になったマシンの性能差
これで角田はコース外の問題に煩うことなく、自分の走りに集中できることとなった。その日の午後に行われた予選では、今シーズン、モナコGP以来のQ3に進出し、日曜日のレースは9番手からスタートすることとなった。10位までにポイントが与えられるF1。角田に入賞の期待が高まった。
しかし、日曜日の決勝レースで角田は入賞圏内からスタートしながら、入賞圏外でフィニッシュした。レースの大半をチームメートとバトルしていたため、チームの戦略を疑問視する声もある。例えば、レースでは角田のほうがペースが速かったのだから、チームメートの前に出すべきという声だったり、ピットストップの順番で角田を優先させるべきというものだ。
しかし、アルファタウリに限らず、F1では一方がなんらかのトラブルに見舞われていない以外は、チームが故意にポジションを変更させることはほとんどない。今回の日本GPでも、アルファタウリ以外の多くのチームが、チームメート同士でバトルさせていたことでもわかる。
9番手からスタートしたにも関わらず、角田がポイントを獲得できなかった最大の理由は、ポイントを争うはずのアストンマーティン勢とアルピーヌ勢がともに、日曜日の決勝レースのために、ハードタイヤを温存していたことだ。
これに対して、アルファタウリは予選ポジションを重視して、ソフトタイヤを温存させるために、金曜日に2セットあるハードタイヤのうちの1セットを使用していた。これにより、予選では角田がアストンマーティンとアルピーヌを上回ることができた。だが、レースではアストンマーティンとアルピーヌが新品のハードタイヤを2セット使用できたのに対して、角田は新品のハードは1セットしか残っておらず、まったく歯が立たなかった。
日本GPが開催される鈴鹿サーキットは世界屈指の難コース。しかも、今年の日本GPはセーフティーカーもスタート直後に1回出ただけで、大きく荒れることはなかった。こういう状況では、レース結果はごまかしが効かずマシンの性能差がそのままレース結果に反映されやすい。
つまり、日本GPでのアルファタウリは実力で入賞する力が備わっていなかった。
2012年の小林可夢偉以来の日本人ドライバーの母国グランプリを見られなかったのは残念だが、その現実をいまは受け入れるしかない。
(文責・尾張正博/モータージャーナリスト)