なぜ井上拓真は11.15両国V1戦で世界王座9度防衛の最強挑戦者アンカハスを選んだのか…「目標は兄がやった4団体統一。強い相手と戦わないと強くなれない」
そのアンカハスは、ビデオメッセージで、「拓真選手は優れたボクサーで、兄弟そろって動きも俊敏で素晴らしいです。もちろん拓真選手は世界チャンピオンですから。防衛戦で戦う機会を与えてくれたことに感謝しています。素晴らしい試合をしましょう」と、挑発するわけでもなく冷静沈着に語りかけてきた。かえってそれが不気味だ。
ソリスからベルトを取った後に、尚弥から「次はプロとして魅せることも必要になってくる」との注文をつけられた。今回の試合に関しては「相手が強いんだから何が何でも勝て」とハッパをかけられている。
「自然と魅せられる試合にはなると思う。相手が強いんでピンチの場面も出てくるだろうし、その場面で、どういった対応ができるか。そこは未知のところ。そこも含めて楽しみですね」
そして拓真は、こう理想の決着パターンを明かす。
「いつもKOで終わらせたいと思っている。コンビネーションよりも理想はカウンターで終わらせたい。その準備もしている」
その先に見据えている目標がある。
「兄に続き4団体を統一すること」とハッキリ言う。
だから、この試合の位置づけは「統一王者への通過点」でしかない。
尚弥が、4つのベルトを返上した後の次の王者はすべて出そろった。IBFがエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)、WBOがジェイソン・モロニー(豪州)、WBCが、尚弥と2度対戦したノニト・ドネア(フィリピン)との王座決定戦に判定で勝ったアレクサンドロ・サンティアゴ(メキシコ)。ロドリゲスとモロニーの2人は尚弥がKOで撃破した相手。
誰とやりたいか?と聞くと、拓真は「2つの団体(の王者)は、尚が戦ってきた選手。そこと絡んでやっても面白い」と答え、兄が4年前に英国グラスゴーに渡ってWBSSの準決勝で対戦し、2ラウンドにボディブローで悶絶させTKO勝利したロドリゲスと、3年前に無観客のラスベガスで対戦して芸術的カウンターで倒して病院送りにしたモロニーをターゲットにあげた。相手も「兄に敗れたリベンジを弟で」と燃えてくるだろう。拓真にとっても、兄が倒してきた王者を乗り越えてこそ、ベルト統一にも価値が出る。
拓真は、すでに25日から尚弥、いとこでWBOアジアパシフィックスーパーライト級王者の浩樹とともにジム内合宿をスタートした。元3階級制覇王者でフィジカルトレーニングに精通している八重樫東トレーナーと元ロンドン五輪代表の鈴木康弘トレーナーの2人が考えたメニューを1週間消化して、基礎体力を強化、10月から本格的なスパーリングに入る予定だ。