ラグビーW杯で日本に敗れたサモア主将が「私達より組織的だった」と絶賛し英メディアは「失っていた野心と流暢さを取り戻した」と8強への前進を評価
しかし、同メディアは前半で評価を逆転させている。
「日本の小柄なランナーたちとサモアのハードヒッターたちが対峙する、と見られていた試合は、どうやらこれまでの先入観にとらわれていたようだ。そう思わせるだけ、日本のオープニングトライは見ていて楽しいものだった」
試合が動いたのは前半13分。今大会初先発のFBレメキ・ロマノラバ(34、NEC)が左サイドを大きくゲイン。ラックから素早くパスを受けたFLピーター・ラブスカフニ(34、クボタ)が相手のタックルに耐えながら先制トライを決めた。
32分には再びレメキが、今度は右サイドを突破。ラックから左に展開し、最後は大外にいたFLリーチ・マイケル(34、東芝)がインゴールへ飛び込んだ。難しい位置からのコンバージョンキックを決めた松田は、この時点で今大会におけるキックの成功率100%。後半に初めて外したものの、それでも16本蹴って15本成功と驚異的な数字を残している。
英国メディアの『Daily Mail』は、試合がなかったイングランドの準々決勝進出決定をアシストした日本の勝利を、4年前と比較しながら報じている。
「今大会に入る前から勢いに欠けていた日本は、失われつつあった野心と流暢さを取り戻しつつあるように見える。サモア戦で見せたアタッキングプレーのなかには、2019年に自国で開催された前回の祭典を華やかに盛り上げた、まばゆい輝きを思い出させるものがあった。最後は追い上げられ、猛攻に耐える時間を強いられたものの、ジェイミー・ジョゼフに率いられる日本は、来たるプールDの最終戦でロス・プーマスを倒せると信じているはずだ」
ロス・プーマスとはアルゼンチン代表の愛称であり、日本と10月8日のプールD最終戦で対峙する。アルゼンチンは29日に3連敗中のチリ代表との第3戦を迎えるが、まず間違いなく勝利するだろう。勝者が準々決勝へ進む直接対決へ。アルゼンチンメディアの『Charin』は、日本は眼中にないとばかりにサモア戦をこう伝えた。
「日本は後半のほとんどを数的優位な状況で戦いながら、最終的には薄氷の勝利にとどまり、来週末の最終戦を前にさまざまな課題を露呈した。ロス・プーマスはフランス大会の準々決勝に進出するためのロードマップを、すでに知っている」
サモア戦では先発が発表されていた副キャプテンのSH流大(31、東京)が、試合当日に急きょ欠場するアクシデントがあった。開催国フランスの高級紙『Figaro』も、動揺を乗り越えて手にした勝利を評価しつつ、こんな懸念も伝えている。
「規律正しい日本は後半の途中まで、大差で勝利した上でボーナスポイントも手にするかに見えた。しかし、劣勢に立たされながらも最後まであきらめなかったサモアの前に、最終的にはボーナスポイントをあきらめざるをえなかった。ロス・プーマスを破り、準々決勝へと進む可能性はあるかもしれない。しかし、決して十分とは言えないだろう」
得失点差などに関係なく、勝者が笑い、敗者が涙する運命の最終戦はナントのスタッド・ド・ラ・ボージョワールで、日本時間の10月8日午後8時にキックオフを迎える。