「日本が刀を抜く」なぜ日本サッカー協会は北朝鮮の“暴挙”を許さず意見書を提出したのか…平壌でのW杯アジア予選の安全安心確保
しかし、結果は来夏のパリ五輪をにらみ、U-22代表で臨んだ日本に準々決勝で敗れた。韓国のサッカー専門誌『Best Eleven』は、日本が意見書をAFCとFIFAへ提出した状況を受けて、朝鮮民主主義人民共和国サッカー協会(DPRKFA)が「国際サッカー界への復帰と同時に、懲戒処分を受ける可能性が出てきた」と報じた。
「日本が刀を抜いた。日本の立場としては、来年3月に待つ次回W杯出場をかけた北朝鮮とのアジア2次予選も考慮せざるを得ない。来年3月には北朝鮮とのホームゲームだけでなく、北朝鮮への遠征も予定されている。選手団の安全が非常に重要な問題となるだけに、今大会で起きた北朝鮮選手の暴力的な態度を問題視する方針であると思われる。そして意見書の提出により、AFCとFIFAがDPRKFAにどのような処分を下すのかが注目される。北朝鮮は今回関連した選手や協会に対する懲戒処分だけでなく、W杯予選のホームゲーム開催にまで影響を受ける危機に直面する可能性があるからだ」
今年11月からスタートするアジア2次予選で、日本は北朝鮮、シリア、ミャンマーとマカオの勝者とともにグループBに入った。予選はホーム&アウェイ方式で行われ、日本は来年3月21日にホームで、同26日には敵地で北朝鮮との連戦が組まれている。
2次予選を首都・平壌で開催するかどうかについて、DPRKFA側からは現時点で何のアナウンスもない。ただ、国交のない北朝鮮での戦いはビザ発給や出入国審査、滞在中の安心安全を巡り、ピッチ外でも神経をすり減らす戦いを強いられる。約半年後の対戦をみすえて先手を打ったのではないかと、同メディアは記事のなかで伝えたわけだ。
北朝鮮には悪しき前例もある。1982年にインド・ニューデリーで開催されたアジア大会。準決勝で延長戦の末にクウェートに敗れた直後に、試合中から判定に不満を募らせていた選手やスタッフが審判団を取り囲み、衆人環視の状況で暴行を加える大事件が発生。直後に北朝鮮に対して、2年間の国際試合への出場停止処分が科されている。
主審を含めた審判団は試合で起こった事態を主催者側へ報告する。今回も例外ではなく、北朝鮮に対して重い処分が科されるのは必至だろう。しかし、意見書が提出された直後に新たな懸念も生まれた。3日夜に行われた女子サッカー準決勝で日本と北朝鮮がともに勝利し、6日の決勝で顔を合わせることが決まったからだ。
男子のヨンナム監督の言葉からも、北朝鮮は必要以上の対抗意識を日本へ抱き、それを是とする傾向が強い。男子の敗退と意見書の提出を介して、それらがさらに増幅される可能性は決してゼロではない。なでしこジャパンとは別編成の日本女子代表として今大会に臨み、連覇へ王手をかけた選手たちに万が一の事態が起こらないことを祈るばかりだ。