なぜ亀田和毅はIBF世界フェザー級2位決定戦で実力は下の南アボクサーにまさかの僅差判定負けを喫して「井上(尚弥)チャンピオンの名前を出して申し訳ない」と謝罪したのか
井上尚弥の名前をやたら口にすることに一部のアンチからは“売名”との批判があった。井上陣営は、挑発に乗ることもなく沈黙を続けているが、その心境は想像に難くない。そういう井上陣営の感情を推しはかった上で、和毅がここまでの発言の数々を謝罪したことは立派だった。和毅は、心の内では、ずっと井上をリスペクトしていた。モンスターの名前を出すに値しない試合をしてしまったことを冷静に自己総括できていたのだろう。
和毅はセコンドを務めた父の史郎氏に「心強かった。給水など回復にいい仕事をしてくれた。結果を出せなかったのは自分の責任」と感謝の意を伝え「世界戦が2つある中で自分の試合をメインにしていただいたのに。お兄ちゃんにも申し訳ない」と、再タッグを組んだ興毅氏にも頭を下げた。
こういう心構えのアスリートには、きっと未来は開かれる。
だが、描いていたプランは大きく狂った。
いかんせん、減量から解放され、フェザー級で期待されたパワーアップがうまくいかなかった。本人は「関係ない」と否定していたが、相手の耐久力も増す。元々はスピードタイプ。スタイルチェンジするには時間も労力もかかる。
そもそも、IBF世界同級王者のルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)は統一戦へ目を向けており、指名挑戦権を持っている阿部麗也(KG大和)の指名試合さえ簡単に決まらない状況ではあるが、和毅の3階級制覇への道のりは、より厳しいものとなった。
「もちろん(計画は)狂う。今回勝ってアピールして、その次に世界戦と考えていたが、負けたことで、ガタっと落ちるわけで。次どうやっていくかを、もう一回考えて決めていく。自分一人で決められない」
和毅は今後の修正プランを明かさなかった。
興毅氏は、弟の気持ちをおもんばかり、こうエールを送った。
「和毅は初めて負けたわけじゃない。悲観はしていない。3150ファイトは、一回負けたら終わりではなく、もう一回、再生する舞台。和毅には、キャラもあり、数字も持っている。彼が望むならプロモーターとしてふさわしい舞台を作り続けていきたい」
32歳のボクサーがもう一度ゼロからのスタートとなる。
モチベーションをどう保つのか。今後の再起相手として誰を選ぶのか。ドラミニとの再戦をファンは見たいと思うのか。イバラの道に和毅はどう立ち向かうのか。今こそボクサーの“本当の覚悟”を試されることになる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)