なぜカシメロは不甲斐ない負傷ドローに終わり井上尚弥戦のアピールに失敗したのか…「井上には楽勝」と豪語も大橋会長は「もうちょっと練習しないとダメ」と苦言
「目に血が入って見えない状況で倒されるのは嫌だった。血が止まれば、やらして欲しいと訴えるつもりだったけど。まあしゃあないです」
3ラウンドまでの採点は2者が29―28でカシメロ、1者が29-28で小國と割れていた。あのままラウンドが進めば、さらにカシメロのガス欠が激しくなり、小國のペースになった可能性は高い。しかし、もし試合が続いていたら?の質問にも、「わからない。ボディは効いていたが、パンチは死んでいなかった。どこかで(一発)もらえばわからない。パワーは落ちていなかった」と慎重に答え、カシメロの持つ底知れぬ怖さを感じたことを隠さなかった。
一方のカシメロは「レフェリーの判断をリスペクトしているので仕方ない。油断はしていなかった。この結果も仕方がない」と試合結果を受け止めた。
カシメロは「小國を倒して次に井上だ」と前日会見で豪語していたが、結果は伴わず、その発言が空虚に映るようなどっちらけのファイト内容となった。
カシメロとプロモート契約を結ぶ伊藤氏は、WBOに、この試合に完勝することを前提に指名挑戦者として認めてもらうように申請。WBOも承認手続きに入り、現在3位のランキングが1位に格上げとなる可能性があり、井上尚弥戦が実現に近づいていたのだが、一歩、後退した。伊藤氏も「リアルに今日の内容で、今すぐに(井上と)やらせろというのはお門違い」と厳しい評価を与えた。
リングサイドの最前列で見守った大橋会長は苦笑いを浮かべていた。
「コメントし辛いよね、引き分けだからね。1、2回で、ばっと倒してくれればウォーと盛り上がったけど、これはちょっとね。始まってすぐの攻撃に迫力はあった。井上とやるなら、もうちょっと練習しないと駄目。すぐに息が上がっていたし、スタミナがきれてしまっていた。相手をちょっとなめていたのかどうかわからないけどね」
スタミナが切れ、あれだけガードが甘ければ、井上尚弥のカウンターの餌食になってキャンバスに這うことになるのは目に見えている。
そして、こう注文をつけた。
「もう1回、試合をしてもらって豪快に倒してもらわないと。来年、連勝を積んでね。今日も5ラウンドを過ぎるとどうなったかわからない展開。再戦してもらうのも良いかもね」
12月にWBAスーパー&IBF世界同級王者のマーロン・タパレス(フィリピン)と戦う予定の井上尚弥が、4団体を統一すれば、来年の対戦候補として“問題児”カシメロの名前があることは間違いない。
大橋会長も「今後戦う中での候補ではあることは確か。1ラウンドに見せた迫力は、尚弥とやったらスリル満点になるだろうね。思いきりが良いし、迫力あるので、試合は面白い」と、そのポテンシャルとファイトスタイルは評価している。
ちなみに井上尚弥は会場には来ず、大橋会長に「(カシメロ戦は)U-NEXTで見ます」と話していたという。
当初、運営サイドはカシメロが、スカっと勝った場合、大橋会長をリングに上げて、ファンに向けてマイクで一言コメントをもらう準備を整えていた。だが、すべての計画は白紙に戻った。
それでも意気揚々と会見場に現れたカシメロは、こう豪語した。
「みんなが次は井上、井上と言うが、本当にやりたい。決着をつけたい。ただ井上のスパーリングパートナーの小國があんなものならば、井上と戦ったら楽勝だ」
確かに小國は、かなり前に井上とスパーリングをしたことはあるが、正式なスパーリングパートナーではなく、カシメロは勘違いをしていた。
露呈したスタミナ不足についても「今回は軽いトレーニングしかしてこなかった。井上との試合が決まれば、ハードにやる。本物のカシメロを見せる」と言い訳をした。