なぜ横浜DeNAは延長11回二死一、三塁で外野前進守備を敷いて広島にサヨナラ負けを喫したのか…CS初戦の明暗を分けた新井監督と三浦監督の采配力の差
セ・リーグのCSファーストステージ第1戦が14日、マツダスタジアムで行われ、広島が延長11回に秋山翔吾(35)のサヨナラヒットで先勝した。8回一死二塁から代走の羽月隆太郎(23)が三盗に成功、続く菊池涼介(33)のスクイズで同点に追いつき、延長に入って九里亜蓮(32)を中継ぎに使うなど、新井貴浩監督(46)の采配がさえわたった。一方で横浜DeNAは、延長11回には二死一、三塁から、なぜか外野に前進守備を指令して頭上を抜かれるサヨナラ打を許すなど三浦大輔監督(49)の采配には、疑問符のつくものが多かった。両監督の采配力が明暗を分けるCS初戦となった。
秋山がセンターオーバーのサヨナラ打
3時間52分の死闘にピリオドを打ったのは秋山だった。
左腕の東に対してスタメンを外れ、途中出場していた男は、「どこで行くんだという準備」を怠っていなかったという
「行くだけ。絶対に決めてやると。それだけでした」
2-2で迎えた延長11回二死一、三塁から、ウェンデルケンのチェンジアップを捉えた、その打球はセンターの頭上へ。なぜか横浜DeNAの蝦名は前進守備を敷いていた。懸命に背走するがとても追いつかない。秋山は一塁を回ったところで右手を突き出し、真っ先にベンチを飛び出た新井監督は、ぴょんぴょんと飛びはねながら「みんな来い!」と他のナインに合図を送りながら、二塁まで到達したヒーロー目指して一目散に走り出した。
「さすがアキ(秋山)。ほんとよく決めてくれた。声などはかけていない。もう頼んだという形だった」
大興奮だ。
セ・リーグでタイトルを獲得したことのある某プロ野球OBは、一打サヨナラの二死一、三塁で、外野に前進守備を敷かせた横浜DeNAのベンチワークに疑問符をつけた。
「ベイスターズはデータをもとに大胆に守備隊形を動かすことで知られるが、あそこで、秋山に外野の前へ落とされる打球をケアして、いちかばちかの前進守備を敷くのは、あまりにもセオリーに反している。走者二塁なら、まだしも走者三塁でサヨナラの場面。定位置であれば、もしかすれば追いついていたのかもしれない。両チームの投手陣が踏ん張り、1点差を争う短期決戦では、ベンチワークが勝敗を左右する。厳しい言い方だが、この日のゲームは、三浦監督と新井監督の采配力の差が如実に出てしまったと思う」
采配力の差が明暗を分けた。
新井監督のタクトが冴えわたった。
床田が6回に宮崎に先制を2ランを浴びたが、その裏に菊池、野間の連打から西川の犠飛で1点を返し、8回に衝撃的な戦術を見せ同点に追いつく。
先頭のデビッドソンが際どいボールを選び四球で出塁した。最多勝&最高防御率の投手2冠の東が、この日、出した2つ目の四球は、いずれも8番のデビットソン。今季24試合、172回3分の1を投げて15個しか四球を出していない東だが、短期決戦を意識する中で、必要以上に一発を警戒したのだろう。
新井監督は、迷わず代走の“切り札”羽月を送り、“ピンチバンター”の矢野を告げた。矢野が1球でバントを決め、得点圏に走者を進めると、菊池を打席に迎えた初球に、なんと羽月が完全なタイミングでスタートを切り三盗に成功した。東―山本のバッテリーはまったくのノーケア。意表をつかれた山本は、三塁へのスローさえできなかった。各社の報道によると、羽月は「監督から行ってもいいと言われていたので1球目から狙っていた」という。