箱根駅伝予選会の地方大学惨敗から見えてきた全国化への大きな壁…格差は埋まるのか?
ただし、今回参戦した地方大学でケニア人留学生を起用したのは札幌学大のみ。一方、関東勢は今回の予選会で17校がケニア人留学生を出走させている。もし京産大に強力なケニア人留学生がいれば、約6分の短縮が可能な計算だ。そうなると20位近くまでジャンプアップすることになる。
また今回の出場校では立命大、皇學館大、環太平洋大が10月9日の出雲駅伝に出場しており、3校は調整が難しかった。
皇館大は出雲駅伝が14位で箱根予選会が35位。國學院大で箱根駅伝出場経験のある寺田夏生監督は、「関東勢の足元にも及ばない」と完敗を認めつつも、「短い期間で大変だったけど、出て良かった。将来的に打倒・関東と言えるようにしたい。ぜひ箱根駅伝の全国化をご検討していただきたい」と声を上げた。立命大・田中コーチも「今後全国化があればチャレンジしたい」と話している。
今回、地方大学はボーダー争いにまったく絡むことはできなかった。それでも現地で取材した実感として、予選会に初参戦した地方大学は「出て良かった」という雰囲気だった。地方から箱根予選会に出場するには費用もかかるが、地方大学の選手にとっても箱根駅伝は夢舞台。予選会でその空気に触れるだけでも、素晴らしい経験になったようだ。
なお「西の箱根駅伝」と呼ばれる丹後大学駅伝(関西学生対校駅伝競走大会)は85回を記念して、今大会(11月18日)は青学大がオープン参加する。そして青学大の遠征費はクラウドファンディングで集めた。
箱根駅伝を主催する関東学連がどう考えているのかわからないが、箱根駅伝は「世界に通じる選手の育成」を目的に創立された大会だ。個人的には全国に門戸を開いてもいいと感じている。
ただし、箱根駅伝のチケットは年々、プレミア化している。関東勢にとっては地方勢の参加は〝有難迷惑〟になるだろう。両者のバランスを考えて、5年ごとの記念大会のみ全国化するのはいかがだろうか。
いずれにしても箱根駅伝を本気で目指すとすれば、チーム強化に時間がかかる。選手の大学選びにも影響を及ぼすため、最低でも5年前にはアナウンスすべきだろう。大人気の箱根駅伝だが、アイデア次第ではまだまだ進化できるはず。第100回大会をステップにますます発展していくことを期待したい。
(文責・酒井政人/スポーツライター)