森保監督と久保建英の試合中“戦術会談”の内容が判明…海外組からの“戦術逆輸入作戦”で日本は強くなれるのか?
日本のゴール前で左右に開き、ビルドアップの起点になるセンターバックを含めて、カナダがマンツーマン気味に激しくプレスをかけてくる。GK大迫敬介(24、サンフレッチェ広島)の選択肢は限定され、結果として前線へのロングボールが目立った。
前半の攻防をベンチで見ていた久保にも、思うところがあったのだろう。どれだけ激しいプレスを受けても、最終ラインから徹底してボールをつないで主導権を握るソシエダで得た知見を、9月のトルコ代表戦でも右サイドで縦関係を築いた毎熊に伝えた。
2人が話し合う光景をたまたま目にした森保監督が、ビルドアップというキーワードにひかれて久保だけを呼び止めた。カナダ戦の直後こそ「内緒です」と質問をかわした久保だったが、森保監督の発言を受けて、この日の取材対応でこう語っている。
「僕自身はヨーロッパのトップレベルでプレーしている、とは思っていません。それでも代表を強くするために、監督もそうしていろいろな選手に聞き、いろいろなことを融合させようとしている。そこに一個人の選手がもたらせるものがあるのならば喜んで、という感じですね。もちろん、僕だけじゃないはずですよ。そうしたいと思っている選手は」
久保の「僕だけじゃない」で思い出されるのがDF冨安健洋(24、アーセナル)だ。セリエAのボローニャからアーセナルへ移籍してから約2カ月後の2021年11月。代表に招集された際に「スローインでのボールロストが多すぎる」と指摘。さらにこう続けた。
「現代サッカーではスローインもセットプレーのひとつとしてとらえていて、アーセナルでは普段から練習しています。例えばスローインからすぐにサイドチェンジのパスを出せれば、そこから一気にチャンスを生み出すことができますよね」
今夏にブンデスリーガのシュツットガルトからプレミアリーグの名門リバプールへ移籍した、キャプテンのMF遠藤航(30)はクラブを率いる名将ユルゲン・クロップ監督(56)の代名詞、ゲーゲンプレッシングを実際に体感した一人としてこう語っている。
「リバプールのサッカーは、切り替えの部分の早さが生命線のようなところがある。そこは代表でも求められる部分だと思い、照らし合わせながらやっています」
森保ジャパンの主力の大半を、ヨーロッパ組が占める状況が生まれて久しい。第二次政権ではさらに、週末のリーグ戦に加えてミッドウィークにはヨーロッパの国際大会を戦う、各国リーグの強豪クラブに所属する選手の数が一気に増えた。同時に代表へ招集された際にはチームにきっかけや気づきを還元してくれる、ヨーロッパのトップレベルにランクされるさまざまな知見を持った選手も、以前とは比べものにならないほど多い。