なぜ久保建英は左足に不安を抱えながらも過密日程の中で強行出場したのか…激戦の2列目争いで示したかったものとは？

　　サッカーの日本代表が17日、ノエビアスタジアム神戸で行われた国際親善試合でチュニジア代表に2－0で快勝し、破竹の連勝を「6」に伸ばした。左足の不安から13日のカナダ代表戦出場を回避した久保建英（22、レアル・ソシエダ）がトップ下で先発。前半43分のFW古橋亨梧（28、セルティック）の先制点の起点になり、後半24分のMF伊東純也（30、スタッド・ランス）の追加点をアシストした。自ら申し出る形で同37分に交代した久保は、不安を抱えた状態で出場した一戦で何を示したかったのか。

　後半37分に自ら申し出て交代

　右タッチライン際にいた久保が、不意に日本のベンチへ近づいた。
　チュニジアの選手交代で試合が一時中断していた後半30分。久保から何かを伝えられた名波浩コーチ(50)が森保一監督(55)のもとへ急ぐ。しばらくして、アップをしていた選手たちのなかでDF橋岡大樹（24、シントトロイデン）が一気にペースを上げた。
　7分後に日本が最後の交代カードを切る。万雷の拍手が降り注ぐなか、橋岡にバトンを託してベンチへ下がった久保は、自ら申し出た交代だと試合後に明かした。
「もともと左の太もも裏に張りを持って今回の代表に来ていたし、1試合目（のカナダ戦）はそれで出場を回避していたなかで、途中からちょっと張ってきたので。名波コーチからは『何かあったら言って』と試合前から言われていたし、そういうコミュニケーションが取れていたなかで無理をするところじゃないと思い、あの場面では『あと5分くらいはいける』みたいな感じで伝えました。今回はここでお役御免かな、と」
　代表に合流する直前のアトレティコ・マドリードとのリーグ戦では先発し、後半20分までピッチに立っていた。代表招集を辞退するほどの怪我ではないものの、一抹の不安を抱えているなかで、大事を取って13日のカナダ戦出場を見送った。
　舞台を新潟から神戸へ移して行われたチュニジア戦。中3日の試合間隔では当然ながら左足の不安は解消されない。それでもトップ下で先発した久保を、82分間にわたって駆り立てていたものは何なのか。何よりも代表での定位置確保へ向けた強い思いがある。
　ソシエダで右ウイングのポジションを不動のものにして久しい。しかし、森保ジャパンの右サイドアタッカーでは、群を抜くスピードを武器にする伊東が絶対的な居場所を築いている。ドイツ、トルコ両代表に連勝した9月シリーズ。久保が先発したのは、現時点におけるベストメンバーが名を連ねたドイツ戦ではなかった。
　胸中に渦巻く悔しさを、現状を「それだけ代表の競争のレベルが高い」とポジティブにとらえて覆い隠した。伊東と共存しながら結果を残すのも、巻き返しを図っていく道のひとつ。トップ下を担ったチュニジア戦で、いきなりチャンスが巡ってきた。
　両チームともに無得点で迎えた前半43分。中央でボールを前へ運んだボランチの守田英正（28、スポルティング）から縦パスを受け、左足でトラップした直後だった。相手選手から強烈なチャージを食らい、バランスを崩しかけながらも必死に踏ん張ってMF旗手玲央（25、セルティック）へつないだプレーが古橋の先制弾を導いた。
「相手が来るとわかっていたので、逆に体を預けて、という感じでした」