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電光石火の3連打を生んだ阪神の岡田ミーティング
電光石火の3連打を生んだ阪神の岡田ミーティング

なぜ阪神の岡田監督は5回の好機で村上頌樹に代打を出さなかったのか…広島撃破の集中打の裏に隠された“岡田ミーティング”とは?

 

 一死から坂本が、岡田監督が「あれで繋がった。フォアボールみたいなもんよ」と評価した死球で出塁。続く木浪が、指揮官のミーティング通りに初球のシュートをライト前へ弾き返し、一死一、三塁として打席には村上。短期決戦ゆえに代打があってもおかしくなかった場面だが、岡田監督は、動かなかった。しかもバントのサインも出さない。
「誰も(代打の)用意をしていなかった。打てのサインよ」
 勝負勘が働いたと同時に18年ぶりのアレを実現した“守りの野球”を優先させた。
「6回までは行かせるつもりやった。1-1の同点で代打を行っても、ヒットを打つ、打たんはわからんこと。一番防御率のええピッチャーやから。それにバッティングええからね」
 村上も「最初はバントもと思ったが、打てのサインだったので、最初からいこう」と、初球のチェンジアップを思い切り引っ張った。その打球が一塁線を襲う。
 前に止めることはできる打球だった。だが、この大事な一戦に6月以来となる異例のスタメン抜擢を受けた4年目の韮澤の足が金縛りにあったかのように動いていなかった。その打球は、勝ち越しのタイムリーとなってライト線へ抜けていった。
 岡田監督は、「ゲッツーだけは打つなと思っていたけど、いいとこに飛んだ。ヒットやんか。エラーちゃうでえ」と笑って返したが、韮澤の本職は、二塁か三塁で、堂林であれば、併殺に終わっていたかもしれない。新井監督の奇策は完全に裏目に出た。
 さらに一死二、三塁と続くチャンスに近本も2球目のファーストストライクをセンターに返す。「最低外野フライでいい」の気持ちだったという。2者が生還。「集中打という意味で、あそこしかチャンスがなかった」と、岡田監督が試合後に振り返った、この回に一気に3点のリードを奪いゲームの主導権を握った。
 実は、岡田監督は、ある魔法をかけていた。
 優勝したチームの売りはリーグナンバーワンの494個の四球数に象徴される粘りで、遅い仕掛けが特徴だった。だが、この日のミーティングで岡田監督は“逆”の指令をしていた。
「向こうは一番フォアボールが嫌と思う。シーズン中の戦いから見てね。どんどんストライクが来るから、今日は最初から打っていい」
 先発の九里の心理と制球力を逆手に取った。
 その岡田マジックにかかったかのように、木浪、村上、近本の3人は揃ってファーストストライクを狙い打った。電光石火の3連打である。

 

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