「ナゼ?」来年1月1日に国立で三笘や久保ら海外組を呼べない森保ジャパンと“格下”タイの親善試合が組まれた理由とは?
同じく年末年始に試合があるFW古橋亨梧(28、セルティック)らのスコットランド勢、ポルトガルのMF守田英正(28、スポルティング)の招集も不可能。彼らがアジアカップの代表メンバー入りした場合、それぞれの国から直接カタール入りする。
対照的に年末年始にウインターブレークが設けられているMF伊東純也(30、スタッド・ランス)らのフランス勢、DF板倉滉(26、ボルシアMG)らのドイツ勢、さらにオランダ勢やベルギー勢は可能性を残す。いずれもJFAが選手を拘束する権利を有しないため、タイ戦に招集するためには各所属クラブと個別の交渉が必要になる。
オフ明けとなるJリーガーに試合勘を取り戻させるといっても、9月シリーズに続いて10月シリーズでも招集された国内組は4人ずつだった。アジアカップに臨むメンバー23人も、ほとんどがヨーロッパ組で占められるだろう。その多くを招集できなくても元日に日本代表戦を開催する理由は、1月1日が特別な日として位置づけられているからだ。
サッカー人気の低迷に悩んでいたJFAは1968年度の第48回大会から、天皇杯決勝を元日に旧・国立競技場で開催してきた。当時の幹部の「明治神宮に参拝する初詣客の1%でもいいから、その帰路に国立競技場へ来てくれたら」という狙いは的中し、以来、半世紀近い歴史のなかで「元日の風物詩」として定着した歴史がある。
しかし、2021年の第101回大会は翌年1月に日本代表活動があった関係で、昨年の第102回大会は年末にW杯カタール大会が開催された関係で、シーズンオフの確保を重視した日本プロサッカー選手会(JPFA)の要請を受ける形でともに前倒し。2021年は12月19日に、昨年は10月16日にそれぞれ決勝が開催された。
一方で今年の元日には、国立競技場で全日本大学サッカー選手権大会決勝が開催されている。桐蔭横浜大が3-2で新潟医療福祉大を破り、初めて頂点に立った一戦には1万2481人の観衆が駆けつけている。元日のサッカー観戦を望むファンが多く、かなりの観客数と収入を見込める状況も、異例とも言える今回の国際親善試合開催を後押しした。
JFAの宮本恒靖専務理事(46)も「1月1日は日本のサッカー界にとって重要な日。初めての代表戦で、注目度の高い試合ができれば」と期待を込めている。
チュニジア代表との国際親善試合(17日、ノエビアスタジアム神戸)で2-0と快勝した森保ジャパンは、国際Aマッチで破竹の6連勝をマーク。9月9日には敵地でドイツ代表を4-1で撃破するなど、連勝の間の総得点が「24」を数えている。注目度は高く、カナダ代表戦(13日、デンカビッグスワンスタジアム)とともにチケットは完売だった。
しかし、11月以降の国際Aマッチデー期間は、2026年の次回W杯出場をかけたアジア予選が2次、最終と立て続けに行われるため、国際親善試合は国内外を問わず2025年9月まで行えない。特に国内で開催される国際親善試合は入場料やテレビ放映権料、代表グッズ販売などで億単位の収入が見込め、JFAの収入の大きな柱を成して久しい。
そのなかで元日に開催されるタイ戦には、たとえベストの陣容を組めないとはいえ、自社ビルを売却するほどの財政難に直面してきたJFAとしても大きな期待をかけたくなるはずだ。いずれにしても、選手たちにとってはイレギュラーな実戦となるため、森保監督には個々のコンディションを見極めた上での、過重な負荷をかけない起用が求められる。
(文責・藤江直人/スポーツライター)