なぜブライトンは三笘薫と5年総額約38億円の大型契約を結んだのか…背景に潜むビッグクラブ移籍に備えたしたたかな戦略とは?
オプションを含めた5年契約をまっとうすれば、三笘は31歳になっている。報道通りに「将来を託した」形に近づいていくが、一方で高額な違約金を全額支払ってでも三笘を獲得したい、というビッグクラブが現れれば状況は大きく変わってくる。
ブライトンからは今夏、アルゼンチン代表MFアレクシス・マクアリスター(24)がリバプールへ、エクアドル代表MFモイセス・カイセド(21)がチェルシーへ移籍した。しかも、主力だった2人はともに昨シーズン中にブライトンとの契約を延長している。
マクアリスターは昨年10月に、契約を2025年6月末まで延長。アルゼンチン代表として臨んだカタールW杯制覇を介して市場価値がはね上がったなかで、6000万ポンド(約109億3700万円)の違約金で中盤の強化を図るリバプールへ移籍した。
カイセドの契約延長が発表されたのは今年3月だった。2027年6月末までの長期契約を結んだわずか3カ月後に、プレミアリーグ史上で最高額となる、1億1500万ポンド(約209億6245万円)もの違約金を提示したチェルシーに8年契約で加入した。
2017-18シーズンからプレミアリーグで戦うブライトンが展開してきた、独自の選手発掘及び育成戦略を地元メディアの『Sussex World』はこう評価する。
「世界中から無名の若手選手を発掘し、育ててきた積み重ねがいま、当然の評価を得ている。すべてがプレミアリーグにおける地位を確立するために貢献している」
ブライトンでのプレーで市場価値を高めたマクアリスターやカイセドが残した違約金は、次の世代を発掘および育成するための原資となる。ブライトンのなかで受け継がれていくサイクルのなかに、川崎から加入した際の違約金250万ポンド(約4億5600万円)を自らの力で、現在進行形で高騰させている三笘も加わる可能性は十分にある。
いずれにしても、ブライトンとの契約を延長したいま、全幅の信頼を置くデ・ゼルビ監督のもと、三笘にとっていままで以上にサッカーへ集中できる環境が整った。招集されていた日本代表の10月シリーズを体調不良で辞退した決断も、UEFAヨーロッパリーグと並行して戦ってきた今シーズンの過密日程で疲弊した心身を再び充電させたはずだ。
複数の英メディアは、依然として三笘の動向を注視しているビッグクラブとしてリバプール、マンチェスター・ユナイテッド、ラ・リーガ1部のバルセロナなどをあげる。21日から再開されるプレミアリーグで、ブライトンは同じく三笘に大きな関心を寄せる昨シーズンの三冠王者、マンチェスター・シティのホーム、エティハド・スタジアムに乗り込む。