「18年ぶりにアレしてもシリーズに出れんかったらシラケるわな」なぜ阪神は広島にCS3連勝で日本S進出を決めたのか…知られざる岡田監督の苦悩と覚悟

　セのCSファイナルステージ第3戦が20日、甲子園球場で行われ、阪神が４－２で広島を下して3連勝（プラスアドバンテージ1勝）で9年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。阪神は先発の大竹耕太郎（28）が4回に先取点を許したが、その裏に逆転、さらに5回に同点に追いつかれるが、6回に坂本誠志郎（29）の2打席連続のタイムリーで勝ち越し、7回には押し出し四球でリードを2点に広げ、桐敷拓馬（24）の2イニングを含む5人を注ぎ込むリレーで逃げ切った。CSのMVPには第2戦でサヨナラ打を放った木浪聖也（29）が選ばれた。相手はオリックスか、ロッテか。岡田彰布監督（65）が「相手はオリックスやろ」と予想する日本シリーズは、28日からパリーグの本拠地で開幕する。

　「3戦とも苦しいゲームが続いた」

　あと1球コールが大合唱となった。賛否があろうと関係ない。4―2で迎えた9回二死一、二塁。守護神の岩崎の西川に対する投球がフルカウントとなった。岡田監督は「ちょっとドキドキしたけど岩崎だから最後はやってくれると思っていた」という。
　2球ファウルの後、西川をレフトフライに打ち取ると、甲子園を包んだ歓喜の雄叫びは、六甲おろしへと変わり、岡田監督のCS優勝インタビューを待ちわびた4万2642人のファンが「岡田コール」を始めた。
　お立ち台に指揮官が上がってマイクを持つとボルテージは最高潮。
　まずファンに感謝の意を伝えた岡田監督は、「投手陣はシーズン通りやってくれたんですけど、打つ方はあんまりね、シーズン通り行かなかったですね。だから3戦とも結構苦しいゲーム続いたんですけど、最後はやっぱり優勝チームとして負けられないという気持ちがあったので、僅差のゲームですけど勝ち切れたと思います」と素直な気持ちを吐露した。

　シリーズ第3戦も息が詰まるような激戦になった。
　走者を出しながらも粘投を続けていた今季6勝0敗のカープキラー大竹が、4回二死から不運な打球も重なり、3連打を浴びて先に1点を献上した。だが、その裏、中野のシリーズ初ヒットから大山の四球が絡みノイジーのライト前タイムリーで同点に追いつき、続く坂本が初球を三遊間へ狙い打った。「全然打てなかったので開き直った。うしろの木浪が調子いいんで僕にストライクゾーンで勝負すると」。捕手らしい読み勝ちで一気に逆転に成功した。
　それでも広島もあきらめない。5回に一死一、三塁から堂林の犠飛で同点に追いつく。だが、6回から救援した桐敷が圧巻の三者凡退で試合の流れを引き寄せた。その裏二死から佐藤がセンター前ヒットで出塁し、ノイジーが四球でつなぎ、坂本が2打席連続のタイムリーをセカンド後方へ落とす。詰まった打球にはタイガースナイン全員の執念が乗りうつっていた。
　桐敷が回跨ぎで7回を封じると、その裏に2番手の矢崎を攻め、前夜のサヨナラヒーローの木浪がレフト前ヒットで先陣を切り、ピンチバンターの小幡がきっちり送ると、広島ベンチは第2戦に続き、近本を申告敬遠して中野との勝負を選んだ。だが、その一死から上位に申告敬遠で塁を埋めるというリスクのある奇策は裏目に出た。中野が四球を選び、満塁となって森下も押し出し四球で、貴重な4点目を刻んだのである。
　岡田監督は、8回の広島の反撃を岩貞、石井、島本の3投手で封じてリードを守った。中野のダイビングキャッチと森下のスライディングキャッチがピンチを救った。
　プレーボール直後に菊池の強烈なライナーを飛び込んでキャッチした木浪の美技に始まり、6回以降、リリーフ陣は、ゼロ封。選んだ四球は申告敬遠も含めて7つあった。岡田監督が嘆く通り、打線は爆発はしなかったが、四球を絡めて貴重な得点を生み出すタイガースの野球でCS突破を決めた。3試合がすべてその展開だった。
　3試合の合計ヒット数は、広島が21本で阪神が17本。だが、失点数は、阪神が4で広島が10。阪神のリリーフ陣は3試合で失点しなかった。
「紙一重や。守り勝ち。はっきり言うて。リリーフ陣は点取られたか？取れてないやろ。シーズンもそんな感じやったしな。勝ち越したら何とか逃げ切れるというかな。うまいこと点を取ったなと思うよ。チャンスらしいチャンスなかったんやんか。今日の坂本にしても、少ないチャンスでええ仕事をした。いろんな意味でも相手を上回ったんちゃうかな」
　CS優勝インタビューでは、司会者からCSの投打のMVPを？と無茶ぶりされ「打はやっぱり木浪ですかね。投は誰だろう？投は誰にしようかな？全員ですけどね、今日1番大事なとこで2イニング投げてくれた桐敷に」と返した。その木浪が本当のCSのMVPも獲得した。