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井上尚弥の2階級4団体統一のかかったタパレス戦が12月26日に有明アリーナで行われることが正式発表された(©SECOND CARRER)
井上尚弥の2階級4団体統一のかかったタパレス戦が12月26日に有明アリーナで行われることが正式発表された(©SECOND CARRER)

なぜ2階級4団体統一戦が正式決定した井上尚弥は封印していたKO宣言を解禁したのか…「どこまで強くなれるか」…タパレスに抱く危機感とボクシング配信時代を引っ張る責任感

 プロボクシングのWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者の井上尚弥(30、大橋)がWBAスーパー&IBF世界同級王者のマーロン・タパレス(31、フィリピン)と12月26日に東京江東区の有明アリーナで4団体統一戦を行うことが25日、横浜市内のホテルで発表された。2階級4団体統一に成功すれば、現在ウェルター級の4団体統一王者テレンス・クロフォード(36、米国)に次ぐ史上2人目の快挙となる。会見に出席した井上は「KO決着をお見せたい」と宣言。「キャリアもあと5年くらいかな。日本人がたどりつけないところまでいきたい」と飽くなき気持ちを明かした。7月25日に2団体統一王者のスティーブン・フルトン(29、米国)を8回TKOで下した際にはKO宣言を封印していたモンスターはなぜファンを喜ばせる言葉を解禁したのか。

 

(©SECOND CARRER)

 「圧倒して勝ちKO決着をお見せしたい」

 入場曲「Departure」をバックに黒のスーツにドルチェ&ガッバーナの黒いシャツを合わせたシックな出で立ちで会見場に現れた井上には風格が漂っていた。
「圧倒的強さを見せて勝ちたい。ファンの方にはKO決着をお見せしたい」
 スーパーバンタム級への転級初戦でいきなり無敗の2団体王者のフルトンを衝撃的なTKOで葬り、試合後のリングにタパレスが上がってきた瞬間、4団体統一戦へ気持ちが切り替わったという。
「勝ったときのホッとした安心感と、そこでタパレスがリングに上がってきて(対戦が)約束された瞬間は、気の抜けないなという感覚があった」
 フルトン戦の前に井上は珍しくKO宣言を封印していた。だが、スーパーバンタム級の2団体王者となり発言が一変。再びKO宣言を解禁した。

 なぜなのか?
「タパレスのスタイル(攻撃的)を見る限り、そういう決着になっていくのかなという予想がある。フルトン戦の前に(KO)発言をしなかったのはフルトンのスタイル(ディフェンス中心)に加えて、初めてのスーパーバンタムでの戦いもあった。マインドとして判定でも勝つという気持ちでいた」
ーーフルトン戦でスーパーバンタム級で通用するという手ごたえがあったからでは?
「手ごたえはあった。フルトンはフェザー級寄りのスーパーバンタム級だが、タパレスは自分と同じで下の階級から上げてきた選手。タパレス用に準備するボクシングでしっかりと戦っていきたい。バンタム級時代の減量苦も少しはクリアされ、力を生かせる階級だ7月の試合で改めて感じた」
 タパレスは40戦37勝(19KO)3敗の好戦的なサウスポー。今年4月に大方の予想を裏切ってアマ経験豊富なムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に2-1判定で勝利して2つのベルトを手にした。WBOバンタム級王者前後の時代には、大森将平と2度戦い連勝(一度は体重超過)、2019年には岩佐亮佑とのIBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦で11回TKO負けを喫し、2021年には同挑戦者決定戦で、勅使河原弘晶に2回TKO勝利するなど、日本人ボクサーとの対戦が5度あり、日本のファンにも馴染みが深い名前。ただフルトンのように上背はなく、井上にとっては組みやすい相手とされていた。
 詳しく映像をチェックするまで「ゴリゴリのファイターだと思っていた」という井上だが、印象は一変したという。
「上半身が柔らかいしディフェンスの良さもあり、思った以上に技術が高い」
 井上の見立ての通り、左ストレートを強引に振り回してくるだけの粗いファイターに見えて、スウェーなどのディフェンステクニックを駆使して上半身を巧みに動かし簡単に被弾しないという一面を持つ。
 井上はフルトンとタパレスを比較した。
「強いのと、スーパーバンタム級で実績を出しているのは違う。フルトンは上手さで勝ってきた。強さとは違う。強さならタパレスの方がある」
 確かにフルトンは、したたかなポイントアウトで、勝利を重ねてきたが、タパレスは、一発の怖さを秘めたファイター。井上は、こうも付け加えた。
「ハングリー精神。この試合を一発でものにしてやろうという気持ちがもの凄い。気が抜けない」

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